天使の子 後編②完切られた電伝虫の前で皆呆然と立ち尽くす。
ルフィってば勝手ね、だとか。トラ男の体調は大丈夫かしら、だとか。大目付を前にしてよくやるよ、だとか。
全てを置いて、ナミは飄々と立っているペンギンを振り返る。
「……ねえ」
「俺からは何も言えませーん」
両手を上げてにこりと笑う。
そんなペンギンの顔をナミはムッとした表情で見つめた。
「聞きたければ本人に聞いてください」
電伝虫の向こう側で己の船長が倒れたというのに飄々としている男は頑なに首を振る。
それが出来たらどんなにいいだろうか。
薄々、全員が気付いていた。
珀鉛病、そしてフレバンス。その二つは死の外科医、トラファルガー・ローの逆鱗に触れるものであると。
それももしかしたら最も近いところで見てきた、当事者であるかもしれないと。
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