【リレー】イカ焼き。寛七+硝歌。 真夏の、海の家。
仲良しカルテットが、ビールを煽り続けている。
日車に七海、庵に家入。
よくこの四人の予定が、合わせられたものだ。
男性陣は、女性陣には、頭が上がらない関係性。
テーブルの真ん中に線が引かれたかのような、温度差が見えるようだ。
ダンッ!
庵がジョッキを、テーブルへ叩きつけた。
「七海」
満面の笑顔。
対する七海の顔は、無表情。
「はい」
「つまみ」
「はい」
庵の指示には、逆らえない。
七海が、何か買って来ます、と席を立つ。
日車も、運ぶのを手伝う、と理由づけをして、その場を離れる。
「あいつらホントに、気が利かないんだから」
「マジで。歌姫先輩を大事にしてくんないなら、今度治療してやんない」
「それは流石に、治してやんなよー」
キャッキャッ、といちゃつく声が、後ろから聞こえ、日車の下がり眉がさらに落ちる。
売店のメニューを眺めている七海と並んで立ち、相談をはじめる。
「何にする」
「生中は当然として、とうもろこしは歯に引っかかるとか、文句を言われそうですね」
女性陣に、何を出すか。
二人の脳が、フル回転している。
「そうだな。…焼きそばも、青海苔が」
「ええ。たこ焼きも同じくです」
「かき氷は、つまみにはならないな」
「ラーメンは、シメなのでまだ早い」
「おでん…」
顔を見合わせて考えるが、ボツ。
「冬の食べ物出してくるな、と言われる気が」
「暑い中食べるのも、乙なもんだがな。…ん、イカ焼きがあるじゃないか」
「いいですね、これにしましょう!」
日車さんまだー、と、家入の声がする。
時間的にもそろそろ限界だろう。
日車が注文している間に、七海が家入に報告しに走り、庵に尻を叩かれて、戻ってくる。
「機を見て、逃げるか」
「ライフセーバー講座、やってましたよ」
「言い訳に使えるな」
頼んだものを手分けし、テーブルへ運ぶ。
イカ焼きは既に切ってあり、食べやすい状態だ。
庵が、声を上げる。
「遅い」
「すみません」
声を合わせて謝る、日車と七海。
プリッとした甘辛いイカを食べながら、表面に汗をかいたジョッキを、四人で煽る。
「イカ焼きも美味しいけど、おでんもよかったな」
「七海、硝子におでん買ってきて!今すぐ!」
「はっ、はい」
指名された七海が、小走りでテーブルを去る。
手伝う、との逃げ道を失った日車が、無表情でビールジョッキを飲み干す。
「お二人の生も、頼んできます」
と立ち上がりかけた日車の腕を、家入が掴む。
「逃げれると思ってんの」
日車が、なんとも情けない顔で、座り直した。