買い物をしている途中、彼が寄りたい場所があるとのことで一緒に付いていった。
ここだよ、と彼が示した場所は高級なスーツを取り扱う店。
「さぁ、入ろうか。」
「はっ、はい!」
腰に手を回されてエスコートを受けながら店内へ。
こういったお店はまだ慣れていないため、店に入った瞬間に緊張が襲った。
「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ヨンス。」
「は、はい……、す、すみませんっ……!」
「今日はね、ネクタイを買おうと思ってるんだ。今度の店のイベントにも使おうと思ってね。」
「なるほど……。」
「ヨンスにも似合うものを選ぼうと思っているよ。」
「えっ!選んでくれるのですか……??」
「もちろん。だから、そんなに固くならないで大丈夫だよ。」
「はいっ……、兄さんに選んでもらえるなんて、嬉しいですっ……。」
すると彼専属のテーラーが来てくれて、テーラーに対しネクタイを何本か持ってきてくれと彼が言っていた。
ソファに腰を掛けている間、店内をぐるりと見渡す。
客層も品のある人が多く、置いてあるスーツやシャツ、革靴等も全てワンランク上のものばかり。
緊張しなくていいとは言われたものの、心臓の音がどんどん大きくなっていくのが分かった。
「……少し2人になろうか。」
「へっ…??」
彼が気にかけてくれて、別室へ案内してもらった。
2人きりになり、先程よりも少しだけ緊張が解れていく。
「落ち着いた?」
「っ、は、はいっ、あの、気を遣わせてしまってすみません…。」
「いいや、むしろ悪かったね。急に。」
「いえっ、そんなことっ…!」
「未だ時間はたくさんあるから、ゆっくり選ばせてくれるかな?」
「も、もちろんです……っ!」
そしてこの後彼と同じ色のネクタイとスーツ一式を購入した。
店を後にした彼は上機嫌でそれを見た自分も嬉しくなった。
「兄さん、こんなに沢山買ってくれてありがとうございます…!」
「ふふ、いいんだよ。良いものを見れたからね。」
「え??」
「いや、何でもないよ。次のイベントではヨンスもこのスーツを着てくれるね?」
「も、もちろんですっ…!兄さんと同じ色のネクタイも…、嬉しいので……!」
「良かった。じゃあ、家に帰ったらもう一度着てくれる?」
「…?は、はい!兄さんが望むなら…!!」
そう言ってまた笑う彼の考えていることを見抜けなかった自分は、帰宅後に彼から沢山の愛を受け取ることになる。
そして、彼自身も新たな性癖に目覚め、癖になりそうと心の中で呟いたのだった。