しぶんぎ座流星群 はあと息を吐けば白い煙が出来上がる。
そんな寒空の下、ベランダにサイドテーブルとキャンプ用の椅子を二つ。
「流星群だかなんだか知らねえけど明日も朝早いし残業だからもう中に入ろうぜ」
門倉がカタカタと歯を震わせながらボヤく。
雪国出身の癖に寒がりなジジイめと肩に掛けていたダウンジャケットを貸してやる。
「今年のしぶんぎ座流星群は今日しか見れないんだからもうちょっと我慢しろ」
ほらと魔法瓶に入れた暖かい烏龍茶を門倉のコップに注いでやる。
「そもそもしぶんぎ座って何だよ。聞いたことねえよ」
またボヤきながら門倉はコップを受け取った。
「しぶんぎ座はもう使われてない星座だ」
背もたれに背中をつけて深く座る。
「しぶんぎ座もいつかは忘れ去られていく運命なのかもな」
何と一緒とは言えなかった。
門倉は「そうか」とだけ呟きズズっと温かい烏龍茶を啜る。
何と言葉を続けて良いか分からず自然と無言になってしまった。
時折門倉の烏龍茶を啜る音が聞こえた。
「……でもそんな変な名前なら忘れらんねえよ」
烏龍茶を飲み終わった門倉が独り言なように呟いた。
烏龍茶のお陰でより白い息を吐きながら。
「どうだろうな。門倉は同じ事をボヤくぞ」
ふんと小馬鹿にしながら返してやる。
「来年俺が覚えてるか何か賭けようぜ」
ニヤリとと門倉が笑った。
何を賭けようか考えてる間に流星群が流れ出した。