尾杉「——おかあさん、はんぶんこ——」
「——お母さんはお腹いっぱいだから、全部百ちゃんが食べて——」
尾形の母の口癖はいつもこうだった、貧しいなりの精一杯の愛情表現であることは幼少期の尾形も分かってはいたがその反面影で腹を鳴らしていただろう母を思って尾形はいつしか気を遣うことを覚えていた。
何も言わないことが正解なのだ、分け与えることが、分け合うことが母を傷つけることになるのだ、と勝手に一人学んだ。
それから尾形は、半分こ。と言う言葉が嫌いになった。
悲劇か喜劇か、恋人の杉元は人に分け与えることが好きな男だ。自分が美味いと思えば必ず半分食えと差し出すし断れば不機嫌になる、尾形にとってそれは実に面倒な一面を持ち合わせていた。
1444