おつかい「ホントに大丈夫?」
「大丈夫だって! こんくらい、楽勝だって!」
タイガくんはそう言って胸を張る。首からかかったがま口の金具が光る。
「それじゃ、行ってくる!」
「余計なもの買っちゃダメだよ~!」
俺は勢いよく駆け出したタイガくんの背中に向かって声を掛ける。今日はタイガくんの初めてのおつかいだ。先に出たミナトさんに頼み忘れたものを、タイガくんに買ってき貰おうというもので、女将のユキさんの発案だ。ミナトさんに連絡を入れてもいいんだけど、せっかくの機会だし
「行きましたよ」
「それじゃ、カケル。よろしく頼む」
「はい!」
俺は返事をしてからタイガくんの後を追った。
転ばないかな、とか、違うもの買わないかな、とか、知らない人に着いて行かないかな、とソワソワしながら後を追う。追跡って、ちょっと楽しいかも。
タイガくんは、道端で寝ている子猫に挨拶をしたり、手を上げて横断歩道を渡ったり、順調に進んでいく。目的のお店まで無事について、店員さんに目的の商品がどこにあるか聞いて、きちんとお会計して、お店を出た。
そこかで手助けが必要かと思ったけど、どうやら俺の出番はないみたい。
「思ってるよりも、タイガくんは成長しているんだなぁ……あっ!」
家のすぐ手前というところで、タイガくんは漫画のように派手に転んだ。
「……タイガく……ん」
泣いちゃう! 助けなきゃ! そう思ってタイガくんに駆け寄ろうとした時、タイガくんがゆっくり立ち上がった。そして、きっとあちこち痛いだろうに声を上げて泣くことはなく、一歩ずつゆっくり歩き出した。瀬尾の背中は小さいけど、とっても大きい。
「カッコいいじゃん、タイガくん」
俺はその背中を見ながら、ゆっくり歩き出した。