父が事故死し引き取られた親戚宅で歳下の叔父からペット宣言を受けてしまう攻めの話「え、甥がいる?」
聞き返す俺に声もなく頷いた父の表情は疲労が滲み、目の下にくっきりと浮かんだ隈が一層老け込んだ印象を与えている。
家出同然で家を飛び出していた兄の訃報は、平穏そのものだった我が家の空気を一変させた。
不幸な事故だったと聞いている。見通しの悪い交差点で昼間から泥酔した歩行者が道路に飛び出し大型自動車に撥ねられて即死。誰にとっての不幸だったのか、口にするのは憚られた。遠い昔に家を出た彼がどんな暮らしぶりだったのか知らないが、兄はいわゆるヒモと呼ばれる生活を送っていたらしい。
そんな人でも籍は抜いていないし、家族であることに変わりはない。だから通夜も葬儀も父が喪主となり執り行われた。子供の葬儀を行うなんていう憂き目に遭った両親と違い、俺は他人事と割り切っていいのか、何の思い出もない他人のような身内の死を悲しめばいいのか決められないまま、ただぼんやりと通夜が開かれ、葬儀が行われ、全てが終わるのを眺めるしかなかった。
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