「今日花火上がるらしいよ」
そうルカに告げるとキラキラした瞳でこちらを見ていた。あたかも興味なさそうに言ったが、シュウは前々から今日花火が上がることを知っていた。
「見に行こう!」
きっとそう言ってくれると思って。だって事前に言って、そうなんだ、で済まされるのが嫌だったから。
ルカと夜道を歩くのは初めてでどきどきする。ルカと話していると、花火が打ち上がっている音が響いてきた。まだ見えない花火に興奮しているルカと、近所の高台にある小さな公園まで歩いた。
「ここから見えるね」
「うん!久々に見たよ〜シュウは?最後に見たのいつ?」
「小さい頃だったからもうずっと前だよ」
花火大会が行われている会場に来ているわけではないから花火が少し遠い。けど、凄くきらきらして見える。
遠くの空を見つめて無言が続く。シュウは一歩下がって、空を見つめるルカの後ろ姿を眺めた。
「あっ」
ルカが声をあげる。どうしたの、と聞くと、ルカはこちらに首を向けた。
「今の花火の色、シュウの目の色と同じだったね!」
空に視線をやってももう散ってしまったあとで、ルカの言う色を見ることができなかった。すぐに目線を戻したルカが、ほら、また!と指を指す。きらきらした灯りは確かに自分の目の色に似ていた。
「…ほんとだ」
ルカはよく人の目を見て喋るし、純粋にそう思っただけかもしれないが、そんな些細な会話すらシュウにはルカから貰った大切な言葉だ。一歩前に踏み出して、ルカの横顔を見る。
「…打上花火、好き?」
少しだけ開いた口から出た言葉は、遠い花火にかき消されることはない。
「好きだよ」
ルカは空を見つめたまま答える。
「…僕も」
視線を変えずに返した。シュウはまた一歩下がって後ろから花火を眺める。
「…綺麗だね」
ルカの金色に色鮮やかな花火が反射して、宝石の様に輝いて見えた。
しばらくして突然、ぽつり、ぽつりと雫が顔に当たる。
「うわ、降ってきた!シュウこっち!」
ルカに手を引かれ、東屋で雫をしのぐ。そんなに酷い雨ではないが濡れないに越したことはない。二人でベンチに座って、雫が落ちる空の花火を見つめる。
「通り雨かな〜早く止むといいけど」
ルカのテンションが少しだけ落ちたような気がした。
「僕は雨も好きだよ。ほら、濡れた地面にも花火が」
「ほんとだ!!」
雨が止むまで。花火が終わるまで。もう少しだけ、このままで。