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    うそつきの舞踏会4で公開していた、吸血鬼安室さんと人間のコナンくんのお話です。
    イベにて公開したあのイラストや漫画の元ネタ。
    書きかけなので未完結作です。

    #安コ
    cheapChild

    安コ吸血鬼パロ小説安室透。
    人間と共存する数少ない吸血鬼。古くから人間と契約を交わし、その能力を人間のために使い国を守る。吸血鬼の中でも能力が高い。コナンに出会い、ある組織を壊滅させるに至って以降、2人で暮らしている。


    江戸川コナン。
    薬で小さくなった名探偵、工藤新一だが、現在もコナンとして生活している。薬の影響で歳を取りにくい。




    「ぁ……あむろ、っさん……ンん」

    首筋を熱い舌でべろりと舐められている。安室から滲んだ雫が、たらたらと肌を伝っていくのがわかる。ハァー、ハァー、と吐息が荒く掠れていて、容赦なくこどもの細首に降りかかった。

    「ッは……はぁ……ハァ……ッ」

    ざらりとした表面の刺激とは比べ物にならないほどのそれが、きっとこの身に待ち受けている。


    〜〜


    「ねぇ安室さん。触っても、いい……?」

    「うん」

    「……!」

    遠慮がちに尋ねると、安室は長い脚を折りたたんで足元へ下りてくる。なにを、という言葉も沈黙も挟まずにぱかりと口を開け、無防備にも口腔内を晒した。象牙色の、整った歯並びが眼前にある。口腔内には急所がたくさんあって、加えて人間の体で敏感な場所。まぁ、これが“彼”にも当てはまるかはわからないところだが。それでも、躊躇いもなく自分に晒しているのが、不思議と鼓動を穿つ。
    標本のように綺麗に生え揃った並びの中で、一際目を引く鋭利なもの。歯、というよりは別の表現が適しているだろう。
    つ、と指の腹を先へ当ててみると、柔肌はすぐに沈む。薄い皮膚なら簡単に刺さってしまいそうだ。
    月の色と同じ毛並み、金が透ける睫毛と、それに縁取られた天色、鋭い牙……。幾年と時を重ねてもなお色褪せない絵画の中の、あるいは人の手の届かない森の奥に棲む孤高の王──美しい獣みたいだ。

    「──っ……あ」

    安室に見とれ意識が逸れてしまった代償に、皮膚がぷつりと破れてしまう。条件反射で引っ込めようとしたのを、大きな口に捕えられた。

    「……ッ!」

    しまった、と思った。
    戸惑っているうちにすぐ熱い舌が追いついて、檻の中で逃げられない指先に絡みつく。

    「っあむろ、さん……っ」

    声が届かないのか、離すどころか手首ごと掴まれて、蕩けそうな粘膜に嬲られる。じゅう、じゅる、という音が鼓膜をも侵す。全然質感の違う舌と上顎の粘膜に挟まれて、滲んだ血が安室の細胞に溶けていく。自分の小さな指が彼の口の中に入っているという視覚からの情報だけで、血が沸騰しそうだというのに、まるで容赦がない。

    「こな……く、ん……ッ」

    舌を指に這わせたまま喋るから舌足らずな発音は、幼稚で可愛らしいくらいなのに、この行為自体は艶っぽく卑らしいほどで、ギャップが凄まじい。
    安室が眉を寄せ見上げてくる。まるで、「もっと」とねだるかのような視線で。大きな肉厚の舌に乗る、自分の小さくてか細い指が、滑稽に思えた。
    けれど彼は、こんなにも興奮しているのだ。
    見せつけるかのように牙のつるりとした側面にこどもの指を満遍なく擦り付けて、時折鋭利な先を掠めて。

    「ン、待って、あむろさん……!」

    暴走しかかって、血に酔い始めている彼を止めなければならない。そう思うのに、体が動かない。脳裏に浮かぶのは、優しげに微笑む安室の言葉。

    『吸血はしないよ、君が大切だから』

    「っ……」

    止めるべきだ。
    己が望まない行為を許しては、彼が傷つく。オレに傷を作ったことを、きっと酷く後悔して自分を責める。
    彼はオレが怪我をしようものなら本当に機嫌を悪くする。小さな傷でも諭しながら辛そうな顔をする。吸血鬼らしくないと言えばそうなのだが、オレが血を流すということを阻まんとする。

    吸血そんなことしなくたって、僕は君を愛しているし幸せだよ。獣としてじゃなく、ひとりの男として、君のそばにいたい』

    あの目を、知っている。自惚れじゃなく、本気で愛情を、慈しみを向けられているんだとわかる。オレはそうやって周囲に支えられて、ここまで生きてこれた。
    だから彼を信じたんだ。このひとのそばにいるって、その未来を、この手で選んだ。本音を隠してばかりの彼の、本当だと思ったから。



    そう、彼は、嘘つきだった──あれは、本当に彼の真実か?

    「吸血はしない」とことある事に視線で、言動で示すのは、オレに対しての約束というよりも、まるで暗に自分へ言い聞かせているかのようではなかったか?

    オレはそれを見聞きする度、吸血鬼の生態に、より興味を持たなかったか?

    避けるなら、彼は何故自分の牙を触らせた?



    「はぁっ…………」

    口腔から指を解放し、いつの間にか首の肌を舌で愛撫する安室。末梢の血管ではなく、もっと太く、瑞々しい血を味わえるところを。

    「あ……むろ、さん……っあ !」

    安室の膝に乗っていた体はもう体幹を保てなくて、囲まれた両腕にほぼ委ねてしまっている。それもこれも、吸血鬼の唾液には筋弛緩作用、そして催婬作用があるからだというのだろうか。いつか見た本の一文が、脳裏に浮かぶ。

    “吸血鬼にとって、自らの牙を使った吸血は、捕食者としての本能を満たすと同時に、最も効率の良い養分補給である。”

    熱くてたまらない。全身の血が巡って、このひとに捧げたいと集まっているのがわかる。
    自分がただのこどもだったなら、きっとこの行為は恐怖でしかなかったんだろう。いくら催淫作用があるといえど、こどもにはそもそも「そういう」感情は存在しない。だが、中身は思春期も迎えた男子だ。頭はこの正体に気付いているのに、器は知らない「フリ」をする。回路を知っている脳は、必死にボディへ信号を送るのだが、持て余したエネルギーでショート寸前のようだ。
    どうしようも無いこの身体に飲まれてしまいそうな頭で、必死に思考を巡らせた。

    「あむろ、さん」

    呼びかけても返事はなく、代わりにグル、グルル……と喉を鳴らすような音が鼓膜を振るわせる。ぽた、ぽた、と鎖骨に落ちるのは、ご馳走を前にした獣の欲。嚥下しきれないのか、安室の手によって開かれた首元に注がれる。

    「っ......」

    声が届いているのかわからない。それでも、どうにかして意図を伝えたかった。



    吸血鬼は姿を変えて生きている。誰の記憶にも残らないように。
    それは人間の、とりわけ秩序を守るため闇に紛れ暗躍する組織にとっても、都合が良かった。
    永い寿命、高い知性、麗しい見目、強靭な肉体──
    彼らは吸血鬼と密約を交わし、種族の違いをも利用して、最強の武器を手に入れたのだ。

    『確かに最初は......餌、くらいにしか思っていなかった。けれどいろんな人間に出会っていくうちに......彼らが生きていた、生きていくこの国を、守りたいと思ったんだよ』

    安室は遠くを見つめてから、その視線を隣のコナンへ移す。まろい頬に手を伸ばして、一撫でした。思慮深さと優しさを感じられる手の温もりは、自分たちとなんら変わらないと、コナンは思った。




    大切にされるばかりじゃいられない。オレだって大切にしたい、このひとを。
    吸血鬼異質な存在でありながら国に身を捧げてきた、人間ごとこの国を愛している、孤独なひと。

    「大丈夫。……オレも守るよ 」

    必死に伸ばした手で彼の服をぎゅっと握ると、快楽に身を委ねた。


    〜〜〜



    彼は、気付いていたんだ。内に眠る己が獣の獰猛さに。知っていたから、それを危惧していた。不安だったから確かめていたんだ。オレの傍にいるために。自分の生態について調べさせて警戒心を持つように仕向けた。傍にいたいと本気で言いながら、その時を想定して、オレの逃げ道を用意していたんだ。

    「ボクを試したの」

    体の熱も引いた頃、項垂れる安室の横で、ぽつりと投げた。

    「っ……そう、思われても仕方ない。ただ」

    「逃げろというわけでも突き放すわけでもない。それなのに傍にいてくれとも言わない。ボクはあなたのなに?」

    顔を上げた安室と、視線がかち合う。天色の瞳はぐらぐらと揺れていた。

    「…………」

    「……恋人だと思ってるよ、ボクは」

    「……!コナンく」

    「安室さんは違うの……?」

    シーツに包まれた体ごと、力強く安室の腕に抱かれた。

    「違わない……っ俺も、……そう、思ってる。……でも、そう思ってくれる君に俺は……っすまない......」

    「............安室さん」

    手を伸ばし、その震える頬を両手で包み、顔を寄せた。

    「誰かになる必要なんて、もうないんだ。望まれる自分を、演じなくていい」


    『……安室さん、は……何番目?本当の貴方は、誰……?』

    『本当の僕はどれだろうね?……僕も、わからないんだ。僕が誰で、君にとって、誰なのか』

    『…………』


    あの時、言って直ぐに後悔した。見つめた視線を遮るように、一度瞬きをした後に見せた彼の笑みは、不格好で不十分で。彼が倒れるより先に、腕に抱いた。
    本当、なんて。今思えば、吸血鬼としての自分をオレに見せたくなかった彼にとって、これ以上の酷な問いはなかっただろうに。

    「人間みたいにする必要なんてどこにもねーんじゃねーの。確かにあんたは、吸血鬼でありながら人間に近い存在だ。それでもあんたなりに、オレを愛してくれよ。あんたにしか出来ないんだから......」

    あの日から、彼の前で探偵でいることを辞めた。初めてだった。真実がどうであれ、受け入れようと思ったのは。彼がひた隠しにしている秘密を脅かす存在に、負担になりたくなかった。オレの好奇心を知り尽くしている彼は、度々それをやんわりとくすぐった。そうしていつか、自分から手放すために。

    こんなに不器用なひとを、他に知らない。


    「オレはもう、とっくに決めてたんだ。あんたを暴くんじゃなく、救ってやろうって。......オレは、貴方と生きていくよ、これからも『ずっと』」

    「……コナン君」

    まるで、初めて知ったかのような顔で見つめている。あの時とは逆だ。わからないと言いながら、全てを悟ったような顔で微笑んだあの時と。

    同じ痛みや孤独を背負うことも、そんなことは望まないひとだから、せめて。

    「いつでも貴方がだれか思い出せるように、そばにいるよ」

    「っ……」




    きっと飢えていた。
    もう思い出せないほど昔に、人間に牙をかけることは禁じた。それでも血を欲する自分を浅ましく思いながら、彼らとの「契約」のみで生きていた。
    けれど、彼に出会ってしまった。
    静かに、それでいて力強く燃える青焔のように輝く、時の魔物に魅入られた少年。それなのに決してなにものにも囚われないその心に憧れた。だから自分が、その足枷になろうなど、許せなかった。

    炎に、光に安堵を覚えるなんて、人間だけだと思っていたのに。このあたたかな光のそばに、ずっといたいと願ってしまった。ならばせめて出来ることなど、いつかのために帰り道を残すことだけだと──

    「……ありがとう」

    ああ、こんなに嬉しい、なんてな。


    忘れていた頬を流れる感覚に歓喜しながら、彼を見上げた。

    「俺と一緒に、生きてください。これからもずっと、君を愛し続けると誓うよ」

    「……うん。もちろんだよ、貴方はオレの、恋人だから」

    いつも人間たちが言っていた、その呼び名にこんなにも意味を持たせる唯一のひとへ。

    “吸血鬼の牙にかかった人間は、同族へと変化する。完全なる同族へとなるには、互いの血液を交換すること”

    君に捧げるよ。僕の──……

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