キャンプ飯は下準備が大事だ。
立香は気合を入れると鶏肉を焼き始めた。
いつもは少々焦げていようが気にしないが、今回の分はそうはいかない。
明日の予定を思い出して少し手が止まる。
だって、シャルルといっしょにやるキャンプなんだから!
先日、キャンプ場でいろいろとお世話になって、その流れで仲良くなりご飯も一緒に食べたシャルルマーニュ。
連絡を取り合っていたらいつの間にか一緒にキャンプに行く予定が決まっていた。
決まった瞬間は喜びでパニックになりながら、変な返事をしてお流れにするものかとそれは必死だった。
その時に言われた一言。
『立香が作ったご飯美味しかったから、楽しみだ!』
これで気合が入らないはずはない。
翌日にはレシピ本を購入してきて、さらには数回の試作もした。
気合の入り方が違う。
鶏肉が焼けたら、次はみじん切りにした他の材料も炒めていく。
料理は苦手ではないけれど得意というほどでもない。
レシピ通りなら問題はないけれど、アレンジをしようと思うとうまくいったりいかなかったり。
まあ基本に忠実に作っておけば何とかなる。
味付けはほんのひとつまみの塩でも変わってくるのだ、計量はしっかりと。
調理上手の知人から何度も念押しされたアドバイスを胸に刻んで調味料を計る。
人のために作るとなるといろいろなことが気になってしまう。
味付けはもちろんだけど、出来上がりの彩りや野菜と米と肉のバランスだとか、一人だと好き勝手やっている部分。
ちょっとでもよく思ってほしい。
いや、いつかは一緒に大量の肉を買い込んできて焼きまくるとか、キャンプ飯の実験に付き合ってもらえたら、なんて思う事もあるけれどそれはまだ早い。今回じゃない。
今回はとりあえず料理上手だと印象付けたいのだ。
後々自爆しそうな予感が無いワケではないけれど、今は次回につなげるための手を打ちたい!
だって、とその理由を考えて立香は一人赤くなる。
慌てて首を振って考えていたことを放り投げると炒め終わった材料を皿に出してしまう。
粗熱を取ったらラップに包んで、袋に入れて、冷やして。
あと現地でつかう材料の準備や、足りなかったときに簡単に作れるものも用意しておいて。それから調理器具も確認しておかないと。
やることはたくさんある。
それでも明日を思うと楽しくなって鼻歌まで自然に出てきてしまう。
「うまくいくといいなー」
テレビに表示された明日の天気は太陽マークだけだった。