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    shizuka_shi

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    shizuka_shi

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    シャルぐだ♂
    頂いたお題。赤い糸。

    「マスターの運命の人になりたければ、急いだほうがいいと思うわ」
    それじゃあ。ありがとう、素敵な冒険者様、とナーサリーはシャルルマーニュの腕からするりと身を翻して駆けて行った。
    「運命の、人?」
    言葉にするだけでぞわりと背筋に何かが走る。
    何が起こっているのかは分からないが、とにかく急がないといけないといけなことだけは分かった。

    「マスター!」
    シャルルマーニュは自動扉が開き切るのも待てず、体を滑り込ませるように室内へ入る。
    部屋の中には突然入ってきたシャルルマーニュに驚いて身体を固くした立香がベッドの端に腰かけていた。
    特におかしなところは見当たらず、いつも通りの様子にしか見えない。
    ぐるりと室内を見回してみても異常はない。
    「シャルル?」
    訳が分からず不安げに声をかけてきた立香をもう一度みると、その手からは何かが零れていた。
    白い服にはよく目立つ赤い色。
    よく見るとそれは。
    「糸?」
    「これのこと?」
    そう言って立香は糸を手にかけて両手を差し出す。
    近付いて見るが何の変哲もない刺繍糸にしか見えない。
    それが立香の小指にくるりと巻き付いている。はっと、先ほどのナーサリーの言葉が頭に浮かんだ。
    「運命の人ってのはそういうことか!」
    フランスの伝承ではないが、知識としてはある。
    しかし、なりたければ、と言うのは……と考え、ふとこの糸はどこに繋がっているのかが気になった。
    シャルルマーニュの視線が糸を辿りだしたことに立香も気付く。
    「あ、これどこにもつながってないからね」
    そう言って膝の上から持ち上げた小さなボールほどの糸玉は、立香の手には繋がっているけれどそれ以外には繋がっていない。
    「さっきまでナーサリーたちが居てね、これを俺の運命の人に繋ぐんだって遊んでたんだよ。まあ、途中でおやつの時間だって出て行ったんだけど」
    先ほど出会い頭にぶつかって転びそうになっていたナーサリーはその途中だったのかと気付く。
    「運命の人になりたければ」
    シャルルマーニュは立香の手から糸玉を取り上げると、その糸をくるりと自分の小指に巻き付ける。
    「繋げてしまえばいいわけだな!」
    なるほど、これは急がないといけないわけだ。他の誰かがやってきて繋いでしまえばその相手が運命の相手になってしまう。それは許しがたい。
    うまくつながった糸に浮かれていると、立香はぽかんと口を開けてシャルルマーニュを見ていた。
    「い、いいの?」
    じんわりと赤くなっていく顔はこれが嫌だと言っているわけではなく、むしろ嬉しいと語っている。
    これに応えないわけにはいかないだろう。
    シャルルマーニュは立香の手を取り跪いた。
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