地平の星空を見た。
スモッグと街の灯りで灰色に烟った、ビルの隙間から覗くバンカラ街の夜の空を。
あの日、あのタコに言われた言葉をずっと反芻している。
「見上げたらそこに空がある。それだけのことでしょ。」
彼女は、それがさも当たり前のように言った。
その言葉が、ずっと胸の奥で燻っている。
「…」
ほぅ、と息を一つ、吐く。
何度見上げても空は灰色で…星々は見えやしない。
「…行けば、見えるのかな。」
ふと、気になった。
あの空へ飛べば…スモッグと街の灯りが届かない、空の彼方へ高く飛べば、彼女の言っていた景色が見える可能性があるのではないか?と。
思い立ったら、走り出していた。
ビルの隙間を縫い、非常階段を駆け上がる。
そうして辿り着いた、この街で一番高いビルの上。
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