ブラック・フォーマル一 宇田川キリスト教会 12月25日
柴大寿が祭壇の前に立ち、吼えながら獲物に襲いかかるのを、乾青宗は見ていた。柴大寿は、グリズリーのような巨大な拳を柴八戒の薄い腹にねじり入れ、膝で顎を蹴り上げ、血の滲みはじめた顔面を殴り、片手で襟首を掴み上げ、怒鳴りながら体を揺さぶり、憤怒をぶつけるかのように投げた。
信者席の列を乱しながら倒れた八戒は、細い肢体を嬰児のように丸め、泣き出した。離れた場所から眺めていても分かるほどの怯えようだった。
大寿は、その様子にも怒りを煽られたようだった。
どうして俺の弟はこんなにも弱虫なんだ?
怒声と、少年の泣きながら謝罪するかすかな声が、教会の高い天井に響いていた。
「たいした讃美歌だな」
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