無題地球人が月を見上げ、どこかしみじみとした気持ちに浸るように。
私にとって地球はそんな存在だった。青い星、美しく、儚くそしてどこか脆い。
思い出深い惑星だからこそかもしれない。この広い宇宙上でいつも目を引くのは地球だった。
戻りたいと思うときはある。姫というのは、長というのはいいことばかりではない。
だが戻ったところで何があるのだろう。もう私の過ごした街とは違うというのに。
でもやっぱり思うのだ。何かに耐え切れなくなったときに、ふと。
いつもはとどまることができた。ただ今日はどうしてもダメだった。
お兄ちゃんの誕生日だ、と気づく。お父さんとお兄ちゃんと毎年お祝いしていた日。
ケーキが出てきて御馳走が出てきて、お兄ちゃんもお父さんも楽しそうで、もちろん私も楽しくて。
1943