バニー&バニー 騙された……!
ヘルマンと顔を合わせたアルヴァは、羞恥心に顔が熱くなるのを感じた。二人とも頭にウサギを模したカチューシャをしているのは一緒だが、その服装は明らかな差がある。方や付け襟に黒いベスト、そして足の形を強調する黒い革のズボンに黒い革靴。方や付け襟は同じなのだが、その服装は肩を出した黒のレオタードに黒いピンヒール。俗に言うバニーボーイとバニーガールの装いだ。
「君もバニーの格好だと置手紙があったじゃないか!」
「? 何も間違っちゃいないさ。私も『バニー』ボーイなのだから!」
くるりと背を向けたヘルマンの臀部には、ウサギの尻尾を模した飾りがついている。
確かにバニーには変わりないかもしれないが、これではあまりにも滑稽ではないか!
アルヴァは口から出そうになった言葉を飲み込み、ヘルマンをキッと睨んだ。そんな視線など気に留める様子もなく、元凶となった男は満足そうに笑っている。
「想像通り、良く似合っている」
「~~っ!!」
ヘルマンの言葉にアルヴァは耳まで赤くなった。この男に何を言っても意味がない。せめて羽織る物を取りに行こうと、ヘルマンに背を向けたアルヴァだったが、それはかなわなかった。
「おいおい、着替えようっていうのか?」
「君もバニーだと書いてあったから着たのだ! 違うなら当然だろう!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃないか」
後ろから腕を掴まれ咄嗟に振り返ったアルヴァだったが、とても優しい表情でこちらを見ているヘルマンにたじろいだ。そんな隙を見逃さなかったヘルマンがアルヴァの背後に身を寄せ、惜しみなくさらされた太ももをいやらしく撫でた。
「!? どこを触っているんだ…!」
ヘルマンの左手を掴んだアルヴァだったが、利き手と逆の手ではあまり意味がなかった。せめて不満を表そうと肩越しにヘルマンを睨むが、相変わらずとても優しい表情でこちらを見続ける姿に、思わず目を逸らした。
「私としてはもっと君に触れていたい」
「またっ、君はっ、そんなっ」
聞いている方が恥ずかしいほどの甘い台詞に、アルヴァは思わずほだされてしまいそうになる。
ふむ、これはもう一押しか。
内心ニヤリと笑ったヘルマンは畳みかけるように太ももを撫で、自身に引き寄せやすいようにアルヴァの左手首を掴み直した。そして頬にキスをし、耳に唇を寄せた。
「私はどんな姿のアルヴァも好きだ」
「っ! っ!!」
この男は本当に! そういうところが嫌いなんだ!
囁くように言われた言葉に、アルヴァの体は甘く痺れた。このままではまずい。そう思い現状を打破しようと身をよじった。しかしそこで不測の事態が起こる。
「!?」
「おっと」
胸を覆っていたレオタードが捲れた。本来なら、女性の豊満な胸のおかげで形を維持していられる生地だが、残念なことにアルヴァにはそれだけの隆起がない。右手でレオタードを戻そうとしたが、ヘルマンの手がそれを阻止する。
「せっかくだからこのまま私に脱がさせてくれ」
困ったように眉を下げたアルヴァだが、言いづらそうにするだけで何も反論をしなかった。可愛らしい恋人の姿に、ヘルマンはにんまりと笑い、もう一度頬にキスを贈った。
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