一縷の絆すっかり元気を取り戻した友が「研究室を片づける」と言うので、休みを取って付き合うことにした。親友殿はしっかり者だが、貴重面では決してない。ひっきりなしに引っ張り出される資料はいくつもの山を作っており、研究道具の入った木箱がところせましと転がっている。寝泊まりをするための生活用品が揃っていることもあり、どこも荘厳な雰囲気を漂わせるサントレザン城において、ユリウスの研究室だけは雑然とした生活感に満ちていた。改築を繰り返したと言って窮屈な部屋である。そこに私物がぎっちりと収まっているものだから、研究室は別名「ユリウス様の聖域」などと呼ばれているらしい。対策本部室の関係者であっても、この部屋に入るには若干の躊躇いがあるというからなるほど的を得た異名である。
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