使命と望みの狭間で (たかにど傀逅SS)この二次創作SSは、むつー卓『たかにど壊胎』『たかにど傀逅』の重大なネタバレがありますので、セッション未視聴の方、また『壊胎』『傀逅』シナリオ通過予定の方はお読みにならないでください。
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もう、身体が動かない。
薄れゆく意識の中で、自分はまた、信じて負けたんだな、と思った。
仕方ない。
あいつは自爆することを選ばなかった。最後まで、全力で闘い、生きようとした。
どんな使命より強い望みがあったんだろう。
その選択を責めることはできない。俺にはその気持ちがわかる。
…なぜ?
『帰りたい』
人類を守る。託されたその使命を果たすために、訓練をし、闘ってきた。
『帰りたい』
どうしても帰りたい場所があるあいつとは違う。三上とあの子と仲間たちが幸せになってくれる未来があるなら、俺はそこにいなくてもいい。命を無駄に捨てたりしないが、世界のために捧げる覚悟はある。
『帰りたい』
俺の使命と望みは一致している。
それなのに、なぜ俺は、その二つの間で、引き裂かれるように苦しんだ、あいつの気持ちが痛いほどわかるんだろう。
『戻らせてくれ…!』
その叫びが身体を貫いた時、ずっと流していなかった涙が溢れた。目の前が歪む。
それは、あいつの声じゃない。
あの日の自分の声だった。
しなければならない役割はわかっていた。でも、それをしたくなかった。どうしても。
『自爆したら、もうお前に会えない』
『この爆弾を起爆させたら、あの人は死ぬ』
『一緒に夢を叶えたいんや』
『なにもできなくても、最後まで一緒に闘いたいんだ』
僕の望みは…
『帰りたい、優』
「…船に、戻らせてくれ…」
うめくように呟く。
進行を続ける邪神の口の中、ひとりは己の帰りを待つ人に手をのばす。
崩壊する街の地下施設の中、ひとりは深海に沈みゆく人に手をのばす。
使命と望みの狭間にいた二人を、世界の終焉が飲み込んでいった。
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勝くんと違って、元々はヒーローに全く憧れていなそうだった彼が、『傀逅』では、いかにも戦士らしい言葉を吐くのが、痛々しかった。
味方くんは最後の瞬間、船の中を見ていたかもしれない。
彼が戦士になるために押し殺していた少年が、ずっと戻りたかった場所だったとしたら。
これで終わりではしんどすぎるので、もう少し救いのある形で、ちゃんした小説にしようと思う。
とりあえずの応急処置として、会話文ギャグSSも書いてみました。
彼にフライパンで殴られそうな内容。
味方くんと雪ちゃんだけでなく、きんぎょすくいも出てます。
万歳勝くんが完全に巻き込まれ被害者。
ギャグSS『日曜の朝は彼らにおまかせ☆』