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    愛しい紫の君と重なる想いが蜜と成りII
    展示作品です。

    年齢操作パロ。

    前提 成歩堂34歳×御剣19歳。

    ※成歩堂が容疑者の担当弁護士としてDL6号事件を解決済み。その後身寄りの無くなった御剣の希望で成歩堂が養子として引き取っているという設定







    ―――元気でね。

    ―――…っ、待って、待ってください…!

    ―――どうしたの?

    ―――あ、あの…!ぼ、ぼくを…あなたの…―――




    「おはよう、怜侍君」
    「おはようございます」
    香ばしく焼けたトーストとコーヒーの香りが辺りに漂っている。
    かさりと新聞を畳む音がして、いただきますを二人で唱えた。
    もう何回もしているこのやり取りに、未だに慣れない気がする。

    成歩堂弁護士の養子となって、10年になる。

    父を亡くした事件で、その真実を暴いた成歩堂弁護士の姿に父と同じ強い意思を感じ、天涯孤独となった私は彼に頼み込んで養子となった。
    幼い頃からの夢である弁護士になるという憧れがあったから、というのも理由の一端ではある。
    だが、今は…
    「ん?どうしたの?」
    「いっ、いえ…」
    細められた目がこちらを見て一瞬心臓が跳ねる。
    そう、これだ。
    高校生位の頃から、いつしか養父の姿を目で追うようになっていたのだ。
    もしかすると、彼に憧れを持っているからかも知れない。
    だが、恥ずかしさからか向こうから見られるとつい目を背けてしまう。
    「今日も講義だよね?」
    「はい、夕方まで…」
    「そうか、勉強頑張ってね」
    「ありがとうございます」
    法学部に合格し、弁護士になる為に勉強をしているが、弁護士の先輩である養父は特にアドバイス等はせずにただ見守ってくれているだけだった。
    だが、それが逆に良かったのかもしれない。変な先入観も無く勉強に集中出来ていた。
    ジャムを塗ったトーストを齧り、今日の講義内容を頭の中で予習していると、不意に養父の手がこちらに伸びてきた。
    驚いて顔を上げると、養父の指が私の頬を拭ってその指を舐めた。
    「ジャム、顔についてたよ」
    相変わらず不器用だね、と笑うその姿に恥ずかしさと照れで顔が熱くなってきた。
    「こ、子供扱いしないでください…!」
    「あはは…そうだね、でもぼくにとっては君は守らないといけない存在だから、いつまでも甘やかしてしまうんだ」
    更に追い討ちをかけられた為、もうこの話は終わりにしようと再び朝食を食べ進める。
    今日の予習の事は、すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。



    ーーーーー



    「今日はご機嫌ですね、何かあったんですか?」
    事務所で書類整理をしていた部下の心音ちゃんにそう聞かれた。
    思わず顔に出てたかなと苦笑する。
    「ああ…ちょっと、ね」
    適当に誤魔化したが、心音ちゃんは「また息子さんのお話でしょう?」と図星をついてくる。
    「よく分かったね」
    「だって、ずっと息子さんが可愛いって話ばかりですもん」
    いつの間にか結構浸透されるくらい言っていたみたいだ。
    呆れた心音ちゃんが再び書類整理にとりかかったのを見届けながら、請け負っている案件のファイルを開き、息子---怜侍君を引き取った時の事を思い出していた。

    まだ新米弁護士だったぼくに舞い込んできた依頼。
    かけずり回って証拠を集め、真実を突き止めた後、被害者の忘れ形見であった怜侍君から父親になってほしいと言われるとは思ってもいなかった。
    突然のお願いに驚いたが、彼の身内が他にいないことや、ぼく自身が心配であったこともあり、彼を引き取った。
    それから、良い父親というのも分からずに遮二無二ここまで走ってきた。
    ぼくに出来たことといえば、話を聞くことやご飯を作って帰りを待つことぐらいだった。
    亡くなった実父と同じ弁護士になりたいと言っていた彼の夢は、もうすぐ叶うだろう。
    そこに一抹の寂しさを感じながら、また口元に笑みが浮かんだ。





    「ただいま帰りました」
    「おかえり」
    晩ご飯のお皿を出しながら夜遅くに帰ってきた怜侍君を見遣る。
    部屋に入っていったのを確認し、食器を二人分出していく。誰かのために食事を用意することも大分慣れてきた。
    ラフな服に着替えた怜侍君が食卓に来て、二人でいただきますを唱える。
    晩ご飯を食べながら今日あった他愛もない話をする。
    その何でもない時間が幸せであった。
    「…ねえ、怜侍君」
    「はい」
    名前を呼ぶと、怜侍君は少し背筋を伸ばした。それに苦笑しながら目を合わせて話し始める。
    「ぼくは父親としては全然役に立てなかったかも知れないけれど、君がここまで成長してくれて本当に嬉しい。ありがとう」
    急にそんな事を言われて驚いたのか、ぽかんと怜侍君は呆けていた。
    「ど、どうしたんですか急に…」
    「…よく考えたら君ももう大学生だし、卒業したら親の庇護もいらなくなる年じゃないかなとふと思ってね…何だか寂しい気分になったんだ」
    朝は彼の事を子供扱いしていたのに、随分な変わりようだと思う。今日久し振りに10年前の事を思い出してセンチメンタルな気分になったのだろうか。
    「急に変な事言ってごめん、ご飯冷めるから早く食べ…」
    「そんなことない」
    「ん?」
    「そんな…貴方が役に立たなかったなんて、そんなこと全く思っていない。貴方は父として私を守ってくれていたことも…私の夢を叶える為に勉強出来る環境を作ってくれていたことも…知っている。だから…貴方のお陰で、私は今ここにいる。ありがとう…ございます」
    彼の真剣な瞳を見ながら、敬語を抜かれているの、久し振りだなと場違いなことを思った。そして、綺麗だなとも。
    思わず吹き出してしまい、怜侍君が顔を真っ赤にした。
    身勝手なお願いだと思うけれど、これだけは許して欲しい。

    願わくばこの日々が少しでも長く続くことを。
















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