短編集風と共に揺れる片袖。前まではそこにあったはずの義手は、彼女がもう無意味で邪魔と言って鉄くずに変えてしまった。
出会った頃より確実に小さくなった手と背中。幼さが増した見た目。
その姿を見る度に目を背けたくなる
可哀想とかそういうのではなくて。ただ、自分がどうなろうとも絶対になとりちゃんの為に動けるのが羨ましくてそれが出来なかった自分にどうしようもなく腹が立つ。力とか才能とかないからってのは言い訳にすらならないって知っている。だってこの人ならそんなこと気にも止めないだろうから
◇
私には大切も幸せも命の重さも人の価値も分からなくなってしまった。誰かの事を想うのだって出来ない。きっと本物のバケモノになったのだと思う。力を得るためにあらゆる物を犠牲にした事を後悔はしてないけれど...その分大事なモノを捨てたという事を無駄に軽くなった身体が教えているようで気持ち悪い。もうろくに機能しない心を抱えて、守れと自分に呪いを吐き続けてそこまでしたあの子を傷つけて。きっと私は死ぬべき人間なのだろう。なにかあったらまっさきに。
どうせ簡単に人々から忘れられすぐに2回目の死に至るのだから。
でも、どうか貴方は間違わないで、私みたいにならないで守りたいその子を傷付けづに幸せにしてあげてね。
人の傷つけ方は知ってた。でもどうやったら大切な人を傷つけずに守るのかが私にはわからなかった。だから、遠ざけることしかできなかった 。
私があなたを庇って右手を無くした時、自分が怪我した訳でもないのに泣きじゃくって謝るあなたの気持ちを理解できなかった。あなたが無事ならどんな怪我も痛くはなかったから。
あなたが笑って幸せになれる未来が訪れるなら私にとって辛いことなんてないのに。あなたの幸せが私の幸せだから。その未来に私が居なくても私は構わない。私にとってあなた以上の存在はなかった。あなたが生きていて笑えているならそれで良かった。
あなたには何があっても生きて、幸せになって欲しかった。私の命が消えて、意思も存在も全て亡くなったとしても。
私が大切な人を守れる主人公でもヒーローでもない事なんて最初からわかっていたの。
あなたに生きて欲しかったそれが私の最初で最後のわがままだった。
嗚呼あなたはもういない
胸の当たりが空っぽになったみたい