4.テレ屋もここまで来ると病気「はい、アクアパッツァおまち」
「水族館の後にアクアパッツァってな」
はははっと薫は機嫌よさそうに笑った。珍しく喧嘩をせずに水族館を見て回り。こっそり繋いだ手はそのままに、いつもより少し近い距離でまるで子供みたいにアレはなんだろう、きれいだなと虎次郎は話をした。それなのに薫は、ひらひらと泳ぐ鯛を見て「アクアパッツァ食いたいな」なんて言うのだ。それからは、あれは寿司がいいだの、マリネもいいだの。大凡水族館には相応しくない話になって、帰りに虎次郎の家に寄るから、食事させてくれと薫にお願いされたら、虎次郎は頷くしかなかった。寧ろ、もう少し一緒に居たいとそう願ったのは彼も同じで。久しぶりに一緒に食事が出来るのは、正直ニヤけてしまうくらい嬉しかった。
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