焼き焦がすもの 確かに、チャールズ事務所は北部の風土に漏れず華やかな印象のある事務所で、それなりに有名ではあるが、まさかこんな舞踏会のようなものにまで縁があるとは。
並んだ豪勢な食事に手を付けて、周りの煌びやかな貴族たちを眺めながら、オリヴィエは改めてそう思った。
巣の、とりわけ翼の関係者が集まる夜会に、一般人が招かれるはずは無い。つまり今回も例によって任務なのだが、内容は隠密での護衛だ。翼の重役も出席しているであろうこの場にチャールズ事務所が選ばれたのは、実力もさることながら、事務所施設も、そしてそこに所属しているフィクサーも華やかに見えるからなのだろう。
オリヴィエも燕尾服を身に着けて、小脇に杖を抱えていた。杖に刃物を仕込んではいるが、傍から見ればそれなりな貴族に見えることだろう。アストルフォが見立ててくれたものだ。彼もこの会場のどこかにいるはずだが、すっかり馴染んでいるのか見つからない。
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