『その夜にー銃二ー』 その瞬間。
天を仰いだその横顔に、涙の幻が見えた。
2thDRB決勝が終わり、それぞれに割り当てられたホテルの部屋でスマホ画面を操作する。LINEにメッセージを一言、それだけを打ち込んで銃兎は立ち上がった。
「ん?どっか行くのか?」
我らの王の詰問に夜風に当たってくるとだけ告げて部屋を出る。
今日の出場者がホテル外に出ることは禁じられている。閉じられたフロントを通り過ぎ、中庭へと続くガラス扉を開けた。
途端に吹き付ける冷たい風に思わず首を竦ませる。
墨を流したような空には星も見えない。闇に沈む庭を迷いなく進んでいくと背後でもう一度扉が開く気配。
かつかつと石畳に足音が響く。それは、いつものスニーカーとは違う音。こちらへと近付く気配に足を止め、銃兎は煙草に火をつけた。
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