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    nyume_n

    @nyume_n
    二次創作・・・!!!!!!謎ネタとスケベrkgkあるので気をつけてください…⚠️🔞

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    nyume_n

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    漫画にしたくてそんな長いの書けないよネタssです。いやっスタンプ...こんなのにも...ありがたや...

    ふわりと温まった頭で揺れるグラスの光を眺める。
    仕事の合間を縫って駆けつけるバーというのはモンドの醍醐味だ。
    まるでテイクアウトを取るような少ない時間でも一つ飲んで店をでる。まあそのまま飲み始めると言うのもよくある話だ。
    西風騎士団の隊員たちも例に漏れず、昇格するほど呑める時に飲んでおくというのが鉄則だ。騎兵隊長は遠征にかっ攫われた隊員を惜しみながら足早にグラスを傾けた。かすかに泣いている胃を感じつつ、3分ほどの余韻を頬で測る。体の不便さに辟易するがこれは流石に軽食を取らなければ…そう、例えば仕事が早くて優秀でお人好しな赤い薔薇の少女など如何だろうか。断るはずもない彼女のことを思い浮かべればほんとに誰とも分け隔てなく接するいい子だなと感心する。
    空いた腹に酒を入れるのはそんなに気持ちいいものではない。一通りの遊びを嗜む好好人としてはアルコールを最大に味わうには多少の料理とのマリアージュだって…まあ色々言ってもただ時間が無い中ここにきているのだから食事も一緒に済ませることができたら楽なのにという話しだ。そう当てもないはずなのに妙に具体的な対象へ文句を募らせていると、ふと顎下を撫でられたように喉が詰まった。
    そうだ、パンが食べたい。
    自分のアパートにある一昨日買った冷えたバケットではなく焼きたての柔らかい白パンだ。部屋中に香りが漂うと他にもたくさん食べ物を知っているはずなのに何にも変え難いご馳走のようで、きめの細かいパンドミにバターが溶けて、塩を振ったりパテを挟んでも美味しい。美味しかった。

    鬱蒼と私欲に駆られた思考はソワソワと落ち着かない。ガイアは育ちの関係で幸運なことに豪勢な料理をよく食べていた。当然のように舌も肥えたし、センスのある方だと思う。その中でも特別と言うものを覚えている。子供の作ったそれだったが、未だに香りも味も何もかも鮮明に思い出せるのだ。


    「うう〜おいら腹へったぞ。早く帰ってご飯作ってくれ!」
    器用に宙でばたつく妖精を一瞥する。
    「何が良いかな〜、せっかくモンドにいるんだから久しぶりにシチューもいいし、りんごのソテーもいいな!あっ前旦那に作ってもらったお肉ツミツミもすっっごく美味しかったぞ!旅人〜!」
    仲のいいコンビを微温い気持ちで見ていると少しだけ興の乗る話題を拾う。
    旅人はあからさまに面倒だと言う顔で鹿狩りで包んでもらわないかと示談を持ちかけていた。
    「そりゃ鹿狩りの串焼きも美味しいけど、オイラもうちょっと手の込んだ料理が食べたいんだ!」
    「贅沢な…」
    そう言いながらもサイダーを飲み干し、ドアをくぐる頃にはデザート付きのフルコースのメニューをパイモンに作られていた。
    「相変わらず賑やかな奴らだな」
    「君みたいに節操なく居座らないのだからいつでも歓迎だよ。」
    「全く…俺だって客だろ?」
    きちんと飲んでるじゃないかと急いでグラスを仰いだ。
    だと言うのにオーナーは眉を顰め、大凡自分の酒を飲む客に向けるものでない顔を作る。
    酒造の聖地であるモンドにはそれなりに酒に対する風習がある。それはジョッキが空になったときは次を頼むか帰るか。このオーナーが損害に放った居座るというのは店にとってそう悪い状況じゃないはずなのだ。相変わらず難儀なやつだなと言いたいところだが、今ガイアにはもっと気乗りするものがあった。
    「お前もたまに料理するのか?」
    不意に投げられた話題に眉間に寄った皺が消える。ディルックの胸の内も探らないままガイアは無邪気な顔だ。
    「…ワイナリーを空けたり、まあ必要なときには作る。」
    「お前昔から料理も上手だったからな。なあよくパンを焼いただろ?」
    パンを焼いた…。懐かしい記憶が蘇り、よいよディルックは立つ瀬がなくなる心地だった。

    昔、屋敷の厨房で遊ばせてもらったことが何度かある。本格的な調理の指南などではなく子供の遊びの一つと数えて差し支えないものだった。それをなぜ急に懐かしむのだこの男は。ガイアにとってはここ数日囚われていた思い出だがそんなこと知る由もない店主は突然の甘やかな黄金期の面影に狼狽える。
    飄々と酒を飲む男に怪訝な態度をして、あからさまに怪しい行動を仄めかしたのにそれに食いつかなかった。最近のガイアの会話はその殆どがリアクションだから、こうやって自分から話題を振るのは珍しい。
    「あれすごく美味かったぜ。もう作らないのか?」
    笑みを滲ませたような期待しているようなそんな顔だった。こいつが酒さえ飲んでなければとディルックは惜しんだ。これでは酔っ払いの戯言か、弟からのおねだりかわからないではないか。

    しかし、きっとグラスを片付けて扉に鍵をかける頃には何のパンがいいだとか決めてるのだろう。





    ある日、兄とパンを焼いたことがある。
    一緒に作っていたはずなのに、兄のパンはそれまで食べたどれよりも美味しかった。
    だから特別な人間なんだと幼心に確信した。
    俺はその一つを食べ終わるのを悔やんでベッドに持ち込んだ。
    丸く柔らかいパンを抱いて暗い天蓋を眺める。
    よくあるだろう。物語には一切れのパンが欠かせない。
    それは食事であって供物であって取引であって祝福だが、その全ては苦難の話だ。
    一人で寂しく旅をする夢を見る。そのときこのパンを持っていけたらと強く想う。
    きっと暖かくて美味しいうちに俺の旅は終わるから大丈夫だろう。


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