『Endless Scenarios』はじめてベースに触れた時のことはよく覚えていない。いつの間にか腕の中にあって、いつの間にか弾いていたというのが正直なところだ。
ベーシストとしての始まりをいうなら……それはやはり、ルビレの冬木真白になった時のことをいうのだろう。
居場所がほしかった。俺のベースを最大限活かしてくれる居場所(バンド)が。
ベース、ベースを弾く俺、あと足りないものは一つだけ。
けれどそのたった一つの不足は、ベーシストである自分にとっては致命的な欠陥だった。
「……そろそろ潮時かな」
吐きだした紫煙が天井に溜まり白い尾を引いて溶けてゆく。それはまるで、今のバンドと自分の関係性を如実に表しているように思えた。なんとなくで繋がった結びつきなど空に消える煙のようなものだ。一度別れてしまえば無かったものと同じ。向こうはどうだか知らないが、少なくとも自分の中には何も残らない。
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