カーネーション 俺を産んだという女は、俺を産んだというだけで偉そうだった。なにもしていない俺を叩いては邪魔なお荷物だと罵った。なにもしてないのにと泣く俺に、なにもできない役立たずだからと言う。女のいう通りだった。俺は1日4回与えられるひとかけらのパンだけで体力がなかったし体も小さく、字も読めず、数も数えられなかった。俺は役立たずだった。女は俺を閉じ込めていた。俺の居場所は、女の隣にしかなかった。女の居場所もまた、俺の隣だけだった。それが俺にとっての家という場所。
女は外へ出ることを怖がり、毎晩男を家に招いた。そして俺を風呂場へ押し込める。女は毎晩同じ鳴き声で男を喜ばせていた。男がいないとあの女は、そして俺も、生きていかれなかった。
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