陽の色に染まる白 今日も定時帰宅をキメて自宅の扉を開けると、
「あ。アルハイゼン、おかえり」
リビングの陽射しを背に受ける黒シャツ姿のカーヴェが立っていた。そこまで強くない逆光の下、袖にカフスを留めているようでキラッと光って主張している。
「ただいま。出掛けるのか?」
「あぁ。スポンサー様主催のパーティーなんだが、国外の来賓が多いようだから顧客探しに行こうと思ってね。――帰りは遅くなるだろうから先に寝ていてくれ。夕飯はきちんと食べるんだぞ」
「俺が寝ていたら君は家へ入れないと思うがそれはいいのか?」
「ちゃんと鍵は持っていくさ! あれは、どこかの誰かが僕の鍵を持っていたせいなんだからな」
いつもの風スライムのようにふくれっ面になりつつ、慣れた手つきでネクタイを結び、ベスト、ジャケットと順に着ていく。普段は見慣れない姿だが、当人はこういう公の場に何回も出ているからか、支度は慣れたものだ。
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