秘鱗症の治し方 鶴見篤四郎は目だけを動かして辺りを見回した。
そこは郊外の古めかしい店だった。右側の壁一面が木の棚になっており、左奥の壁には漆塗りの容器や刀が飾られている。
手に持った紹介状には「薬屋ホロケウ」とだけ書いてある。
「すまない、待たせたな」
奥から出てきたのは、まだ年端のいかない少女であった。アイヌ紋様のヘアバンド、長い黒髪、太眉、そして――意志の強そうな青い目を見たときに、なぜか胸がざわりとした。
「何か? ああ、私は手伝いじゃなくて店主だ」
「すみません、どこかで会った気がして。アシリパさん……でしょうか。私は鶴見と申します」
ふ、と少女は口角を上げた。
「話はイポプテから聞いた。座ってくれ。――敬語を使われるのは慣れないな、普通にしていい」
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