鍋をあたためる炎の赤が、闇に静かな抵抗を見せる。思えば人間は闇を恐れるのだったな、なんて目をやったのは、両手を合わせる1人の少女だ。
「いただきます!」
「……律儀だな、お前は」
言えばきょとん、とした顔で、大きな目が我を見つめた。
「え、食物に感謝して食べるのって当たり前じゃないの?」
「それはそうだが。最近はそれすら疎かにする輩が多いからな、思ったことを口にしただけだ」
「そう……なんだ。うーん、でもたまに忘れるかもしれない、そのときは怒ってね」
さも美味そうに鶏肉のスイートフラワー漬け焼きを食べながら、しかし蛍の表情は真剣だった。
「魈には幻滅とかされたくないからさ、何か嫌なことあったら指摘してね。我慢しちゃだめだよ」
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