無題ふたりで夕飯の餃子を包んでいた時だった。
皮とタネとでき上がった餃子が並んだそのテーブルに、いかにもなんでもない世間話のような顔をして、俺は恋人に向かって別れ話のはし切れをぽんと乗せた。
リン、前から思ってたんだけど、リンにとっての"好き"って俺のと違うんじゃないか?
(そう気づいた時、俺は何故か少しホッとしたのだった)
リンはそれがなんのはし切れなのか瞬時に判別できなかったらしい。何気ない会話のトーンで答えた。
「そうかもしれない。私には恋愛のことがわかってるとは言えない。」
そして無意識なのかなんなのか、俺をなだめるように少し柔らかい声でこちらをまっすぐ見て続けた。
「そうだとしても、私はニックのことが好きだ。私なりに君を大事にしたい。」
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