連縁小話:異世界拷問姫の世界観を借りたやぶつば+α説明
「連縁の藪雨と異世界拷問姫のヒナちゃん、似てるんじゃないか。パロディ、出来るんじゃないか...!?」というとんでもなく幻覚の産物、の出来てるとこだけ。
時系列的には脳内に地獄を飼ってるヴラド公が教会のお縄につく前、くらいかな…。
魔法が主軸の世界ではまだ珍しい科学者である玄鳥、魔法道具扱ってる商人の黒巫鳥さん、あと機械人形でメイド服を着た藪雨が出てきます。魔術師やってる鶴喰さんもちょこっと。
本文
「プレゼントだよ。こんな辺鄙な場所で一人きりというのは寂しいんじゃないかと思ってね」
と言って黒巫鳥から渡されたヒト一人が入りそうな袋の中には。
やはりというかなんというか、ヒトが一人入っていた。
「お前、とうとう奴隷にまで手を伸ばしたのか」
「心外な! これは純然たる"商談"の末に取引相手から譲ってもらった機械人形さ」
「お前が『商談で』『譲ってもらった』、ねえ...」
外にハネた髪はまるで銀の糸のように繊細だ。そして、なめらかな肢体はレースがふんだんに散りばめられたメイド服に包まれていた。中性的な神秘をまとった顔立ちだがその眼は閉じられていて、しかし、目を開けたならばより美しさが際立つことは間違いない、そう思わせるほどの何かがあった。
...いつまでも袋の中に入れておくのも悪いかと、近くのソファに座らせることにした。
「コホン。それは、かのヴラド公が造った機械人形の内の一体。【親子】【きょうだい】【主従】【恋人】の中からあらかじめ設定された関係性を選ぶことができたなら、そいつは従順な僕を得ることが出来る。使用人でも用心棒でも性奴隷でも何でもござれだ。...まあ、最初の選択を失敗した途端に狂暴な兵器と化すがね。今回の取引相手は【親子】を選んで失敗。ほうほうの体で機能を止めたらしいが、私が赴いた時には屋敷が半壊していたよ」
「そんなところからかっぱらってきたのか」
「いや、あっちの方から持ちかけてきた。どうしてもこの厄ネタを手放したかったようだね。こちらもこのシリーズを扱うのは初めてだったから、情報を仕入れるためにしかるべき値段を払ってさっさと引き上げたさ」
「で、何か情報は得られたのか?」
「ああ、契約を上書きするときのキーワードは『歯車よ止まれ、お前は永遠に美しい』だ」
「そうか、他には?」
「...」
「...それだけとか、言わんよな?」
「...金持ちどもの道楽に使われることが多い、とだけ言っておこうか」
「あー、なんとなーく察した」
「っで、どうする? 4つ...いや3つか。3つの関係性なら、お前は何を選ぶ?」
ここは敢えて、今まで作ったことのない関係性を選ぶのも一興か...と玄鳥は思案した。当たるも八卦、当たらぬも八卦。駄目ならそこが運の尽き、ってことで。
「...うーん...【恋人】、っとか?」
「意外に即答だな...おや」
ソファに座らせていた機械人形を見れば、それはにわかに起き上がろうとしていた。今の呟きで起動してしまった、らしい。
「...! 謀ったな、黒巫鳥...!」
「プレゼントだよ、と言っただろう? こんなレア物もいつかは在庫処分する羽目になってしまうなら、今誰かに所有権を譲った方が遥かに得だからね」
二人の言い合いも露知らず、銀色の髪を持つ人形はゆっくりと立ち上がり、玄鳥の方に身体を向け、そのグレーパールのような瞳に世界を映した。そして、
「おはようございます。ぼくの愛しいヒト。何なりとご命令を」
と、言った。
「......敬語は要らん、呼び方もただの"玄鳥"でいい」
すかさず玄鳥はぴしゃり、と命令する。
「へ、えっと...じゃあ...玄鳥? 末永くよろしくお願いします...で、いいの?」
ぺこり。そんな擬音が似合うお辞儀をしながら、戸惑いを隠せない様子で【恋人】は尋ねる。
「うむ。ばっちり」
ずい、と黒巫鳥が口を挟んできた。
「こいつは過去の経験上、そういうのが苦手なのさ。おまけに偏屈で変人、味音痴ときたものだ。こんなやつだが面倒を見てやってくれないか。...ところで玄鳥、お前の【恋人】の名前はどうするんだ?」
「考えてるわけないだろ。"誰かさん"が突然寄越してきたんだから」
「その"誰かさん"が誰のことを指しているのか、私には全く検討も付かないが...それもそうだな」
よくもいけしゃあしゃあと...と思いつつ見やった先には、ヤブサメという鳥を象った像があった。
「ん..."ヤブサメ"とか?」
「ヤブサメ、がぼくの名前? 可愛くて格好いい響きだね! ねえ、もう一回呼んでほしいな」
「...ヤブサメ。ほら、満足か?」
「~~~っ! うれしい! 好きな人に名前を呼ばれるって、こんなにうれしいんだ!」
ヤブサメは顔を綻ばせるだけでなく、その場をぴょんぴょんと跳ねて全身で喜びを表現した。名前だけでこんなに喜ばれるとは思ってもいなかったので、玄鳥は軽く仰天し―――いつの間にか目の前に真っ白なエプロンが迫っていて―――さらに仰天した。どうやらヤブサメにハグをされている、らしい。あまりの早業に気づけなかった。
「玄鳥、ありがとう! 大好き!」
「あー、私はそろそろ退散しよう。あとは二人っきりで楽しい時を過ごしてくれ」
「おい逃げるな...」
「黒巫鳥さんまったね~」
☆☆☆
以下、こういうシチュエーション見たい!集
①結構ラブラブ度が高いやぶつば。キスをしている。
「ツバ~髪乾かしてもいーい?」
「頼んだ」
「うん、まっかせて!」
「はい、終わったよ! 今日もツバの髪はきれいに仕上がりました」
「んん...サンキュ」
「あ、眠くなっちゃった? ...ツバ、じゃあぼくの首にぎゅーってして?」
「ん」
玄鳥はヤブサメの首に腕を回した。ヤブサメは慣れた様子でお姫様抱っこをする。
「よいしょ、と...。じゃあベッドに運んだげるね。うとうとしててだいじょうぶだよ...」
玄鳥をベッドに寝かせると、ヤブサメはその額に口づけを落とした。
「おやすみ、ツバ。今日もいい夢見てね」
そう愛しげに囁いて、寝室を後にする。
「...眠れるわけないだろ...」
頬を赤く染めながら、玄鳥は布団の中で悶々とした。
(ツバって、やっぱり甘えるの苦手なんだな~。かわいいな~)
狸寝入りであることなんて、とっくに気づかれているとも知らずに。
②言わせたい台詞。
なんやかんやあって玄鳥とヤブサメが離れていた!玄鳥は敵に囲まれ危険な状態!というシチュエーションのやつ。
「来い、ヤブサメ!」
「ただいま、ツバ! ちょっと待ってねコレお掃除しちゃうから、さ!」
③魔術師闡裡鶴喰。
黒い海が広がっている。
ずぶずぶと、ヒトだったものたちが沈んでいく。
海の中心にいる人物へ向けて、もはや意味のない嘆願と強烈な怨嗟を迸らせながら。
やがてその声も聞こえなくなり、
海は消え失せ、誰もいなくなった。
中心に立つ白と黒の魔術師だけを残して。
「お仕事かんりょー♪ っと。 さ~て、おれの可愛いずいふぉんは首尾良くやってくれたかな?」
魔術師は事も無げにそう言って嗤った。