夏の海ひねもす、夜は嵐「ゴールデンウィークが仕事ってことに不満はないが、なんで働いた上でこんな渋滞に巻き込まれなきゃならんのだろうなぁ、八敷一男」
「げほ、そう言うなよ……このルートが最短だったんだ」
助手席から横顔に思いっきりタバコの煙を吹きかけられて視界が曇る。
危ないからやめてくれ、と言うとそりゃすまんなと真下は大人しく引き下がったので、謝るくらいならするなよと正直思った。
だがまあ真下の気持ちもわからないでもない。
世間は超大型連休だなんだと沸いているが、探偵業の真下と、ある種無職……否、怪医家などと呼ばれる自分には関係のない話だ。
どうせ仕事なら事務所で書類整理でもして大型連休の人混みを避けて静かに過ごそうと思っていたのに、安岡によって八敷と真下の二人セットでと名指しで斡旋されたクライアントの呼び出し先は海辺の別荘とやら。
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