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    南想(なそう)

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    エルリの文字書き。エルリ完全固定。モブハンミケナナ派。甘々ハッピーエンドが大好きです。

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    南想(なそう)

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    エルリ pixiv作品『ほどける』の俳優エルリと女優アイのお話

    【うわさのふたりとエキストラ】に参加させていただきます♪短いお話ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。

    #エルリ
    auricular
    #噂のエルリ0725
    rumorOfErli0725

    ウワサの二人〜女優アイの場合〜**


    「アイさんお疲れ様でしたー!」
    「はーい、お疲れ様でした」
    にっこりと笑顔を浮かべて手を振ると、若いスタッフは嬉しそうに手を振り返してくれる。その笑顔のまま軽やかにワンピースを揺らし、通路を歩いて、すれ違うスタッフたちに微笑み挨拶をしてから、私は楽屋の中に入った。
    「…最悪」
    スッと笑顔をやめて椅子に腰掛けると、テーブルに置いてあるミネラルウォーターのペットボトルを乱暴に手に取る。イライラを落ち着かせるように水を一口飲んだけど、一向に収まる気はしない。
    今日は予定通りファッション誌の撮影が入っていた。一週間のコーデ特集で私一人の撮影。撮影は順調でそれなりに乗ってきたところで、気の利かないスタッフが誰かさんを連れてやってきた。隣のスタジオで撮影中だったという、リヴァイ・アッカーマンを。
    お二人のサムリッチのポスター好評でしたよねーなんて言いながら、私に引き合わせたスタッフ、何なの。勝手に親しい共演者みたいな言い方されちゃこっちだって笑顔で合わせるしかないじゃない。
    あの澄ました顔。人を見下したようにじっと見つめる嫌な瞳。どうせ馬鹿にした気持ちで私を見てるに決まってる。その後すぐに出て行ったけど、あの邪魔者のせいでそれからの撮影も何だか気乗りしなくなるし、スタッフたちはあの男のことを格好いいだとか何だか褒めまくってるし、本当に気分は最悪だったわ。
    思い出してまたイライラしているところに、コンコンと扉がノックされた。
    「はい、どうぞー」
    スッと女優の笑顔に変え返事をして、扉から見えた男の顔を見て一気に熱が冷める。
    「お疲れ様です。あの…うちのスタッフが用意した差し入れなんですが、是非アイさんにもと、俺があなたへ挨拶に行くだろうから、持っていってほしいと言われて…」
    リヴァイ・アッカーマンはそう言うと、私に近付き、手に持っていた小箱をテーブルの上に置いた。老舗和菓子店の季節限定商品。私の大好きな店。普段なら嬉しい差し入れだけど、この男から手渡されて嬉しいわけがない。
    「…すみません。皆、俺があなたと親しいと勘違いしていて、断れなくて…」
    小箱を見たまま静かに呟く男にさらに苛つく。
    「は?私があなたを意識しているとでも思ってるの?冗談じゃないわ。別にあなたのことなんかこれっぽちも気にしちゃいないわ」
    じろりと睨みながら言ってやる。本当に冗談じゃない。この男に、男を横取りされた可哀想な女だと思われているなんて絶対に許せない。
    「何を勘違いしてるのか知らないけどね、本当に、あなたのことなんて何とも思っていないわ。名前も覚えていないし、今日連れてこられて誰だったかしらと悩んだくらいよ。あなたは例のことを言いたいのかもしれないけどね、この世界の色恋沙汰なんて日常茶飯事なのよ?最近人気者になった人はまだ分からないかしらねぇ?私は別に本気じゃなかったし、最近も大物俳優たちから口説かれてて忙しくてすっかり忘れてたわよ。だいたいこの世界の恋愛なんてただのゲームだし世間へのアピールなのよ。分かる?エルヴィンはイイ顔してるし、知名度もあって私の得になるからちょっといいかなって考えてただけで、もう、別に、何でも」
    完璧に言い負かしているつもりだったのに、突然目からぽろりと涙が落ちて驚いてしまった。

    何?何なの?

    自分の考えとは違う体の反応に戸惑う。側で立っている男も驚いている。冗談じゃない。私は何も気にしてないわ。今日までだって、誰にも何も言わずに普通の顔して頑張ってこれたんだもの。
    そうよ。エルヴィンなんて、エルヴィンなんて。エルヴィンなんてエルヴィンなんて………。
    「…………私の番、だったのに」
    もう涙も気にせず、眉を歪めて、じろりと男を見上げて言った。
    「ずっとずっと憧れの人だったのよ。私の手の届く人じゃないと分かっていたけど、少しでも近付きたくて似合う女になりたくて、レッスンもお仕事もものすごく頑張った。初めて共演した時、緊張してミスばかりした私を共演者やスタッフは嫌な顔して見てたのに、あの人だけは私の演技を褒めてくれて励ましてくれて嬉しかった。もっと頑張ろうと思ったし、もっと好きになったわ。すぐに恋人を変える恋多き男だって言われるけど、私は彼が本当に優しい人だってちゃんと知ってた。恋人を大切にするし、別れた恋人たちからも信頼されてるのも知ってる。そんなところも全部好きだった。だからいつかその中の一人になりたいと努力したのよ。いっぱいアピールしていっぱい頑張って、ようやく私に興味を持ってくれて、ようやく私の番だと思ったのに!なのに、なんで?!なんであなたなのよ…!」
    目からはポロポロと涙が溢れていく。こんなみっともない姿を見せる筈じゃなかったのに。最悪。最悪だわ。
    「…………………これで気が済んだ?格好悪い女が振られて、ざまあみろって?もういいでしょ。さっさと、行って」
    ふいっと顔を背けて小箱に目を落とした。
    酷い顔をしているんだろうけど、もう取り繕う余裕もない。ここで動く方が負けな気がして、流れる涙も鼻水もそのままだ。
    逆恨みのヒステリー女を目の当たりにしてさぞドン引きでしょうね。でも涙が止まらない。もうどうでもいい。さっさと帰って私を笑い者にすればいいわ。
    嗚咽を我慢しながら肩を震わせていると、背中に手の感触がして驚いた。
    横を見ると、立っていた筈のリヴァイ・アッカーマンが私の横で膝を付き、背中にそっと右手を当ててる。
    「………格好悪くない。俺も同じだ。俺も、振られたら、あんたと同じようになるんだと思う。あんたも、エルヴィンのことが本当に好きだったんだよな…」
    ぼそりと呟き覗き込んでくる男の瞳は、本当に心配そうな顔をしている。
    「…………そう思うなら私に譲ってよ」
    鼻をズビビと鳴らすと、リヴァイ・アッカーマンは眉をぐっと寄せた。
    「悪い。それは絶対できない。…もしいつか俺が振られることになっても、最後の最後まで俺はあいつを信じたいし、側にいたいし、俺があいつを幸せにするって、そう…決めてるから」
    そう言う男の表情は真剣で、相手を想う気持ちで溢れている。背中の手があたたかくて気持ちよくて…本当に嫌になる。もっと嫌な男であれば良かったのに。
    別に本気でどうこうしようと思っていたわけじゃないけど、力が抜けた。
    「ふん。あんな幸せ見せびらかした動画投稿しておいて、振られる気なんてないんでしょ」
    「あ。…観たんですか」
    「あのねぇ。Yooニュースのトップ飾ってトレンド入りしといて目に入らないわけないでしょう?別に観たくて観たんじゃないわよ。何よ、二人ともデレデレしちゃって。明らかに二人だけの世界作っちゃってさ、あんなの誰にも邪魔できるわけないじゃない。あんなもん見せつけられるこっちの身にもなってもらいたいもんだわ」
    「すみません…」
    そう言いながら男は頬を赤らめ困ったように目線を下に向ける。私は、少し軽くなった体を動かしてテーブルの上のティッシュ箱を取ると、思い切りチーンと鼻をかんでやった。
    「はぁ。言いたいこと言ったらスッキリしちゃった。泣くのも愚痴るのも我慢してたのになぁ。やっぱり一人で抱えるのは駄目ね」
    「…誰かに話さなかったんですか?友達とか」
    「何よ。友達がいないって言いたいわけ?私の友達はあなたと違ってみんな売れっ子でお仕事が忙しいの。こんなことで心配かけたくないじゃない」
    ティッシュで涙を拭いていると、男が僅かに柔らかな顔をした。
    「…スタッフの人が、アイさんは昔から新人スタッフにも笑顔で気を使ってくれて、優しい人だと言ってました。だからこの差し入れも、アイさんの大好物だから是非持っていって欲しいって嬉しそうに頼まれたんです。少し信じられなかったが…そうなんですね。すみません。誤解してました」
    「……私は、子役時代からこの世界で頑張ってるの。場の空気を読むのは女優として当たり前でしょ。あースッキリしたらお腹空いちゃった。差し入れ食べよっと。あなた暇ならお茶淹れてよ。ニつね」
    「あ、はい」
    リヴァイ・アッカーマンは立ち上がり緑茶のティーパックでお茶をニつ用意した。
    あっさり謝るし変なことを言い出す男に調子が狂ってしまう。
    無愛想で目付きは悪いくせに、表情や言葉の節々に優しさを感じるなんて。
    「ほら、あなたもいいわよ」
    「え」
    「私一人だけ食べてたら感じ悪いでしょ。座れば?わー美味しそうー」
    小箱の蓋を開けると、色とりどりの綺麗な和菓子が六つ入ってる。やっぱりこういうのはテンションが上がる。桃色の茶巾を手でつまんで一口食べると、上品な甘さが口の中に広がった。
    「んーやっぱり美味しいー。これね、前もって予約しておかないと買えないんだから。貴重品よ」
    「……俺、アイさんに謝らないといけないことが」
    「え?」
    白餡の菓子を手に持っている男が急に言うので振り向くと、困ったように眉をひそめている。
    「あの時、『二重人格女』って思ってしまいました。すみません」
    真面目な声でそう言われ、私は思わず吹き出してしまった。
    「あははっ、何それ酷い。本人に言う?普通」
    「だから、すみませんでした。もう思ってないです。そういうのも全部…少し分かった気がします。今はアイさんのこと、格好良い人だなと思います」
    グレーの瞳は少し微笑んでいるように見えた。私も笑いながら、淹れてもらったお茶を飲んだ。
    「なんか、あなたもエルヴィンも似てる。無自覚で人を誑そうとするわよね」
    「…?いや、俺は違いますけど。あいつはそうですね…。いつも人との距離が近いし…」
    「スキンシップも激しいわよね。あんなイイ声で真横で囁かれて肩に手を置かれるのよ?そりゃ、自分が特別で好かれてるんじゃないかって期待するじゃない。どの現場の子も言ってるわよ。あなた彼氏なんだからビシッと言っといた方がいいんじゃない?」
    「…言っても分かってないですよね。俺はこういう奴だって皆知ってるから、別に何とも思っていないよ、なんて言いやがって…」
    「私とデートしてる時も、別の女性の肩に触れてたのよ?カーティガンが落ちたからって。優しく、こう、両手で背中からよ?囁きながらよ?相手の女はぽーっとなってるし、そのままエルヴィンから離れようとしないし。信じられる?」
    「ああ分かる。クソ。そりゃアイさんも怒るよな。そういうところあるよなあいつ…」
    リヴァイ・アッカーマンはぶつぶつ言いながら白餡を一口頬張った。そのまま二人で少し話をし、なんだか私は楽しくなってきた。
    「ねぇもう面倒だし敬語やめてよ。どうせ一つしか歳変わらないんでしょ?」
    「あ、はい。アイさんがいいなら」
    「リヴァイって呼んでいい?私はアイでいいわ」
    「分かった」
    「よし。じゃあ二人で写真撮ってもいい?インスタ上げたい」
    「別に、いいが」
    私は緑の和菓子を手に持ち、笑顔を作ると自撮りの体勢でリヴァイ・アッカーマンの頬に自分の頬をぴったりとくっつけた。
    「おい、」
    「はいチーズ」
    勝手にカシャリと撮った写真は我ながらいい出来栄え。白餡の和菓子を持ったリヴァイ・アッカーマンは少々戸惑ってはいるものの、綺麗にカメラ目線で私もいい笑顔。泣いた目は適当に加工で誤魔化すとして、シュッシュとタグを追加して投稿画面を見せる。
    「このくらいいいでしょ?可哀想な可愛い女の子の小さな仕返しで、今回のことは許してあげる」
    男は画面を見ると少し口角を上げ、こくりと頷いた。

    # アイ・トンプソン #リヴァイ・アッカーマン #差し入れ #仲良し #ウワキ? #これからデート!?

    「よし。投稿っと」
    「でも、いいのかよ?マネージャーに怒られたり」
    「このくらい平気よ。そうね、このくらいじゃヤキモチにもならないんだろうけど、少しはエルヴィンに意地悪してやるんだから。どうせ、もう嫌な女だし」
    「そんなこと思ってねぇって。…俺もあの時、ムキになって撮影にまで口挟んでさ、結局採用されたのはアイさんの方だし。嫌な奴だったよな…。すまなかった」
    困ったように眉をひそめ反省している男は少し可愛いと思った。なるほど。こっちはこっちで無自覚なたらしらしい。
    その時リヴァイ・アッカーマンのスマホが鳴ったらしく、ジーンズのポケットに手を伸ばす。
    「……エルヴィンからだ」
    「え。もう?なによ、よっぽど心配なのね?」
    「…あいつ変に心配性なんだよな」
    「はいはい。いいわよもう惚気は。私は別に話したくないから、リヴァイが勝手に話しといて。じゃあね」
    まだエルヴィンの声を聞く勇気がないとは、言いたくなかった。
    一応わだかまりは解けたと思うけど、今後も私とは関わりたくないだろうし、もう話すこともないかな、と思っていると、そのまま出ていくかと思ったリヴァイ・アッカーマンが「あのさ」と小さく呼び掛けてきた。
    「俺の幼馴染みでアイのファンがいてな、そいつも俳優で、妹分みたいな奴もいて、そいつらには何でも話せるし、にぎやかで面白い奴らなんだ」
    「…?だから、何よ?」
    「……あんたの友達よりは、忙しくねぇかもしれねぇし、俺たちでよかったら話くらい聞くぞ、ってことだ…」
    静かに言われた言葉に私は目を瞬かせた。
    「…………。本当に、嫌な人よね」
    クスクスと笑いながら私は言った。

    まさかリヴァイ・アッカーマンを好きになる日がくるとは思わなかった。不器用そうで、優しくて、格好いい男、か。
    完璧な、私の負け。

    リヴァイ・アッカーマンとエルヴィン・スミスの仲を応援するようになるのは、多分そう遠い話じゃないだろうな、と私は思った。
    それがそんなに嫌じゃないなんて、本当に、本当に嫌な人たち。

    ねぇ?




              おわり
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    南想(なそう)

    DONEエルリ pixiv作品『ほどける』の俳優エルリとファンのお話

    【うわさのふたりとエキストラ】に参加させていただきます♪短いお話ですが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
    ウワサの二人〜とあるファンの場合〜**

    私の部屋の一番大きな壁には、自慢のポスターがある。
    近所のジーンズショップで大勢のファンの抽選をかいくぐり必死で獲得した、エルヴィン・スミスとリヴァイ・アッカーマンの初共演のあのポスター。
    私は元々エルヴィン・スミスの映画もドラマも観ていたし、彼のことは好きだった。ただ熱狂的という程ではなく、同じくファンである大学の友達と一緒にキャッキャと喜ぶくらいだけど。
    そんな時に、あの共演にやられた。
    白いシャツにデニム姿の飾り気のない二人。雰囲気もナチュラルで爽やかな筈なのに、あの表情と目線と手つきがたまらなく格好良くて、一瞬で惚れてしまった。
    すぐにジーンズショップに走り込み、6千円以上お買い上げの方に渡されるポスターの絵柄のポストカードを即手に入れた。大事に持ち帰り、帰りのバスの中でこっそり見ては顔をにやつかせ、カードに穴を開けないよう100均で購入したイイ感じの額縁に入れて飾った。今それは、私の机の一番イイ位置に置いてある。
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    私は元々エルヴィン・スミスの映画もドラマも観ていたし、彼のことは好きだった。ただ熱狂的という程ではなく、同じくファンである大学の友達と一緒にキャッキャと喜ぶくらいだけど。
    そんな時に、あの共演にやられた。
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    すぐにジーンズショップに走り込み、6千円以上お買い上げの方に渡されるポスターの絵柄のポストカードを即手に入れた。大事に持ち帰り、帰りのバスの中でこっそり見ては顔をにやつかせ、カードに穴を開けないよう100均で購入したイイ感じの額縁に入れて飾った。今それは、私の机の一番イイ位置に置いてある。
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