そっと離れた柔らかい感触に名残惜しさを感じていた。短い、と、思う。いつもよりも。
苦しさなんて少しもなくて、熱さとそれから少しの冷たさ、間接的によく慣れたメンソールの味がした。
目の前の彼は不機嫌を隠さない。何故か?それはわからない。彼の“地雷”はどこにあるのか、私は未だにそれを把握しきれていないからだ。
きっと何かやらかしてしまったんだと思う。私が。私のせいであることだけは明確だ。彼は不機嫌の理由を尋ねてほしいのだ、だから鈍い私もわかるように、そういった態度を取るのだと思う。
甘えているのだと知ったのは実は、最近のことだ。
「あの……私、何か……」
「別に」
別に。一度目の返答は大体こうだ。しかしここで引き下がると不機嫌は数日続く。ただしあからさまな不機嫌ではない、私にだけわかるようにそうと伝えてくるような態度、言動、そういった具合だ。
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