相手を惚れ直させないと出られない部屋 イレヴンの気まぐれに押し切られる形で、暇つぶしに今滞在している拠点の近くにある迷宮に連れてこられた。
しばらくイレヴンが幼子のような一途な思慕を寄せるあの穏やかな男が宿で読書に耽ると宣言した為に、時間が余ってしまったのだろうと、分厚い前髪に目を覆い隠した男は思う。
魔物自体はさして強いものではない。淡々と魔物を屠り、その度にドロップされる魔石やアイテムをひょいひょいとイレヴンがポーチに放り込んでいく。
そんな中、突然迷宮の一室に二人揃って閉じ込められた。何か仕掛けがあるのかとあちこちを探してみたが、扉はおろか壁に薄い隙間一つ見当たらない。
どうしたものかと首を傾げた瞬間。
「あ?」
「は?」
じわりと滲むように壁に現れた文字に、二人は顔を顰めた。
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