阿修羅誕生日記念短文.
木枠と丈夫な麻縄で拵えた簡易的な空の背負子を両肩に下げ、腰に籠を括り付けた阿修羅は立ち上がると外へ出た。温暖な過ごしやすい天気は、誂えたように前日と変わらず晴々としている。
大きな体躯のその後に続いてゆっくり外へと出た帝釈天は自分よりも頭ひとつ分背の高い相手を少し呆れた顔をして見上げていた。
「貴方の嗜好品にとやかく言うつもりはないが。今日やらねばならないことなのか」
「蒸留後も熟成させるには時間をかける。作っておくなら早い方がいい」
「急を要すると言って唐辛子畑は一瞬で出現させたというのに。難儀なことだ」
「お前の気まぐれで此処に何年留まるかわからないというなら、必要なものは先に用意しておくに越したことはない」
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