【二次創作】図書館デートをする話(春クリ)クリスと春はいつものように図書館へ向かう。映画や水族館へ行くこともあるが、小遣いをやりくりするために図書室でゆったり時間を過ごすことも多かった。クリスはこの穏やかな時間も好きだ。
夏休み前だからか、図書館にはいつもより人が多いように感じた。クリスは、本棚から興味がありそうな本を選び、春のいる閲覧席へ向かう。すると、春は真剣な表情で机に向かっていた。時折、シャープペンシルで何かを書き込んでいるようだ。
(勉強してるのでしょうか? 邪魔をしてはいけませんね…)
クリスがそう思って隣の席に座る。春の机には問題集があった。数学の問題が並んでいる。
クリスは春の横顔を見つめた。彼の眉間にしわが寄っている。考え込んでいるようだ。クリスも頭の中で数学の問題を解き始めるが、習っていない分野なこともあり、すぐにギブアップしてしまった。それでも春に声をかけることはできなかった。
30分ほど経ち、春はシャープペンシルを置いた。それからノートを閉じて、軽く伸びをする。
「ん〜……」
クリスがそちらを見ると、彼と目が合う。
「あ、すみません。うるさかったですね」
「いいえ、そんなことありません。お疲れ様です」
クリスが微笑むと、春は安心したように息をついた。
「夏休みの宿題ですか?」
クリスが声を潜めて尋ねると、春は少し恥ずかしそうに、これまた声を潜めて答えた。
「ええ、少しずつ進めようと思いまして」
「偉いです春さん。わたしもこれを読んだら問題集を解かないと」
「来年は受験があるので、宿題は早めに終わらせたくて」
高校受験。来年は春も中学3年生で、高校のことを考える年齢になるのだ。
「行きたい学校があると言っていましたもんね」
そう呟くと、春は笑顔で答える。
「はい。でも、そのための勉強はまだ足りていないので、頑張らないといけません」
そう答える春の姿が、クリスには眩しかった。
「春さんならきっと合格できます。なんて言ったって、頑張りやさんですから」
「そんなことないですよ」
春は照れたように笑った。
「後で、勉強を教わってもいいですか?」
「もちろんですよ」
春が嬉しそうに答える。そして再び問題集に取り掛かった。
クリスは自分の進路について考える。中学1年生の自分には先の話だが、どのような高校を目指すだろう。
春と同じ高校に通えたらと思うが、自分のしたいことはなんだろう。
アイドル部のある学校を探すのもいいだろうし、天文学部にも興味がある。
これからじっくりと考えていきたい。アイドル部もまだ、入部したばかりなのだ。