リビングデッド新横桜が散りかけている。クラージィはぼんやりと、明かり取りの窓から空を見上げた。雲に霞む月を朧月と呼ぶのだと、教えてくれたのも彼の人だった。
持ち帰った菊の花を見て、ノースディンが物言いたげな視線を寄越す。けれどもついに何も言わなかった。何年経っても心配性なことだと思いながら、足下で気遣うようにクラージィを見上げてにゃあんと鳴くノースディンの使い魔の頭を撫でる。
週に数日はこの屋敷で過ごすようになった。恋人を失った慟哭を見ていられなかったのだろうノースディンが、生存確認だと言わんばかりに週に数度は訪れるようになり、あまりの頻度に申し訳がなくこちらからも訪れるようになってはや五年。
「一年とは早いものだ」
「……百年とて瞬く間だ」
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