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    住めば都

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    住めば都

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    villa party! 開催おめでとうございます。
    展示作品です。同イベントXアカウントで開催されら、紋章見せての企画で掲載させていただいたユーハン夢になります。

    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknkプラス
    aknkPlus
    #ユーハン
    uhan

    災いの烙印、あるいは幸福の刻印 見ないようにと意識すればするほど、そちらへ目が吸い寄せられてしまうのは、一体どういうわけなんだろう。
     ユーハンが腕を動かすたび、ちらちらと視界を過ぎるそれを、私の目は追いかけてしまう。彼の体に刻まれた、丸い形の紋章。悪魔と契約した証だ。
    「主様、どうかなさいましたか?」
     袖のない運動着を着ているせいで、ユーハンの二の腕はむき出しになっている。普段は服の下に隠れている紋章を見つめながら思考に没頭していた私は、心配そうに顔を覗き込んでくるユーハンに、思わず身を仰け反らせた。
     近い。すぐ傍で、彼の顔半分を隠す長い前髪が揺れている。滴るような黒色に朱の混じる不思議な色彩は、暗闇で踊る炎のようだ。
    「ごめん、大丈夫。だから……ちょっと離れてほしいかな……」
    「おっと、これは失礼いたしました」
     距離の近さに気づいたユーハンが後退する。
    「その、お声がけしても反応がなかったものですから。どこかお加減が悪いのですか? もしそうであるら、今日の体操は、この辺りで切り上げてはいかがでしょう?」
     提案するユーハンは、心配そうな態度を変えない。普段あまり感情を読み取らせてくれない独特な形の眉も、今は八の字を描いているように見える。
    「体調は、本当に大丈夫。ただ少し、考えごとをしちゃって……体操、つきあってもらってるのに集中できなくて、ごめん」
     別邸の執事たちは、仕事の分担が決まっているわけではない。でも、いつも本邸の執事たちを手伝って忙しそうにしている。自分の鍛錬だってあるだろう。
     ユーハンの貴重な時間を、無駄にしてしまった。申し訳ない気持ちで頭を下げると、彼は慌てたように言った。
    「あ、主様、どうか頭を上げてください! 主様が謝られることなど、なにもございません。気がそぞろになってしまうことは、誰にでもありますから」
    「ユーハンも?」
    「……はい。お恥ずかしながら」
    「……そっか」
     ユーハンが集中を欠いている姿は、あまり想像できなかった。だが本人が言うのだから、そういうときもあるのだろう。
     少しホッとした拍子に、表情が緩む。応えるように、ユーハンも艶やかな笑みを返してくれた。
     私は結局、体操を切り上げることにした。再開したところで、きっと私は腕の紋章に気を取られて、集中できないだろう。
     時は金なり。せっかく時間を割いてもらうのなら、有意義に使うべきだ。
     紋章が気になってしまうのは、心に引っかかっていることがあるから。私は思い切って、それをユーハンに訊ねてみることにした。
    「……ユーハンの紋章は、腕にあるんだね」
    「え? ええ、そうですね」
     頷くと、ユーハンは左腕を胸の前に掲げた。紋章が見やすいようにしてくれたのだろう。
    「私が主様の執事であることを示す、大切なものです」
     長くしなやかな指が、肌に刻まれた印を撫でる。愛おしいものに触れるような、優しげな手つきだった。
    「……悪魔と契約したことを、ユーハンは怖いと思わないの?」
    「怖い、ですか?」
     問い返されて、小さく頷く。だって、私は怖いから。
     悪魔執事になることを、最終的に決めたのはユーハン自身だ。私は死の淵にあった彼の目前へ、その選択肢を差し出しただけ。
     ――本当に? 時折、心の中の自分が囁きかけてくる。忠義に厚いユーハンが、命の恩人である私の願いを退けられるものか、と。
     ユーハンを助けに行ったこと自体は、後悔していない。でも、もしかしたら私は彼の可能性を狭めてしまったのではないか、と。そんな考えが、いつしか胸に刺さって、どうしても抜けなかった。
     悪魔執事が過酷な状況で戦っていることを、あのときにはもう知っていたのに。茨蔦う道にユーハンを誘ったのが正しかったのか否か、私には自信がない。
    「特に、怖いとは思いませんね」
     しばらく思考を整理していたユーハンが、結論を口にした。長考のわりに、ずいぶんとあっさりした答えだった。
    「主様がいらっしゃらなかったら、怖いと感じることもあったと思います。ですが、今の私たちには、主様がいてくださいますから」
    「……私?」
     肯うユーハンの瞳は、希望を描く明るい光を点している。
    「主様がいてくださるおかげで、私たちは天使との戦いに悪魔の力を行使できます。魔導服の副作用も、主様が浄化してくださるので苦しまずに済んでいます。
     あまつさえ、再び絶望に飲まれ悪魔化することがあっても、主様がこの世に引き止めてくださる。この状況で、なにを恐れる必要があるでしょう」
    「それは……」
     否定の材料が見当たらず、俯く。確かに現状は、ユーハンが語ったとおりだ。でも、私が言いたいのはそういうことではない。
     上手く言葉に表せない。もっと直接聞けばいいのに、その勇気が出ない。歯がゆさに握りしめた拳を、ユーハンの両手がそっと包んだ。
     大きな手のひらは、固くひんやりとしている。触れあった場所から筋肉質な腕を視線で辿ると、やがて紋章に行きついた。
     悪魔と契約した証。そして、私の執事である証。
    「とはいえ、私にも恐れることが全くないというわけではありませんよ」
     私の執事が、艶然と笑む。私をドキドキさせようとしているときの、悪い顔だ。
    「それがなにかは、主様はきっとご存知のことと思います」
    「……そうだね」
     身のうちに悪魔を宿すことさえ恐れぬユーハンが、恐れること。これまでの会話のあとで、察せぬわけはない。
     私を、喪うこと。それ以外にないだろう。自惚れているようでいたたまれないので、声には出さなかった。
    「主様。私は、あなたに出会いお仕えする今を、この上なく幸せに思っております。それをお忘れなきよう。……どうか、この先も末永く、お傍に仕えさせてくださいね」
    「……うん」
     見透かされている。後悔、罪悪感、恐怖、そのほか私がぐちゃぐちゃと考えていたこと、全てを。
     その上で、今が幸せだと断言されてしまっては、私には頷く以外に術がなかった。
     悔いたところで、過去には戻れない。だから、伸ばした手を離さないよう握りしめながら、前に進むしかないのだ。私も、ユーハンも。
     傍にいる。いつか、私の命が尽きるときまで、ずっと。たぶん、それが彼の忠節へ報いる唯一の方法でもあるのだろう。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
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    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
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    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしています。
    「おかえり」ユーハン夢。
    予定の時間を過ぎても帰ってこない主様を待ち続けるユーハンの話。

    翌朝、ほかの執事からもユーハンがずっと待ってたと話を聞いて、主様は某ワンちゃんを思い浮かべたとかいないとか。
    待てと言うならいつまでも 主人の帰宅時刻五分前になったのを確認し、ユーハンは出迎えのため本邸の玄関へ向かった。
     今朝、主人は「帰宅はいつもどおりだと思う」と告げ出掛けていった。彼女が「いつもどおり」というときは、十分から二十分くらいの誤差はあるものの、だいたいこのくらいの時間に帰ってくる。
     ユーハンは姿勢よく立ったまま、主人の帰宅を待った。だが、十分経っても、二十分経っても、彼女が戻ってくる気配はない。尤も、不思議な指環の力で二つの世界を行き来する彼女の帰還は、予兆も気配もなく、突然であるのが常なのだけれど。
     そのうち帰ってくるだろうと思っていたユーハンだったが、予定の時間から一時間が経って、さすがに不安を感じた。
     事件や事故に巻き込まれたのではないか。突然の病気や怪我で、身動きが取れなくなっているのかもしれない。彼女を狙う不届きな輩に襲われて、恐ろしい目に遭っていたとしたら。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ハウレス夢
    本編2章の直後くらいに、セラフィムの騙った主様の処刑を夢に見るハウレスの話。

    始めたばっかりですが、生きてるだけで褒めてくれるあくねこくんにズブズブです。
    本編は3章1部まで、イベストは全て読了、未所持カードばっかりだし執事たちのレベルもまだまだなので解釈が甘いところも多いかと思いますが、薄目でご覧いただければと思います( ˇωˇ )
    悪夢のしりぞけ方 ハウレスはエスポワールの街中に佇んで、呆然と雑踏を眺めていた。
     多くの商店が軒を列ねる大通りは、日頃から多くの人で賑わっている。幅広の通りはいつものように人でごった返していたが、いつもと違い、皆が同じほうを目指して歩いているのが奇妙だった。
     なにかあるのだろうか。興味を引かれたハウレスは、足を踏み出して雑踏の中へ入った。途端に、周囲の興奮したような囁き声に取り囲まれる。
    「火あぶりだってさ」
    「当然の方法だよ。なにしろ奴は人類の敵なんだから」
    「天使と通じてたなんて、とんでもない悪女だな」
    「許せないよ。死んで当然だ」
     虫の羽音のような、不快なさざめきが寄せては返す。悪意と恐怖、それから独善的な正義。それらを煮つめて凝らせたような感情が、人々の声や表情に塗りたくられていた。
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    住めば都

    DONE #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました
    「逃げてもいいんだよ」バスティン夢
    ※秋のホーム会話のネタバレを一部含みます
    向こうでいろいろあった主様が、バスティンと馬に乗っているうちに元気を取り戻す話

    主様といるときか、動物を相手しているときだけ、柔らかい空気を纏うバスティンに夢を見ています。彼は穏やかな表情の奥に激重感情を隠してるのがずるいですよね……
    安息の地を探して 天高く、馬肥ゆる秋。
     近頃の馬たちは元気いっぱいで、よく食べ、よく走り、よく眠る。前後の話の流れは忘れたが、先日バスティンは主人にそんな話をした。
     彼女がいたく興味を引かれた様子だったので、ならばとバスティンは提案したのだ。次の休日に、馬たちの様子を見に来るか、と。
     それを聞いて、元より動物好きの主人は目を輝かせた。馬たちのストレスにならないのなら、触ったり乗ったりしてみたい。そう話す彼女はすでに楽しそうで、無表情が常のバスティンまで、つられて笑みを浮かべてしまうくらいだった。
     だというのに――これは一体、どうしたことだろう。
    「……主様」
    「あ……うん。ごめん、ちょっとボーっとしてた。せっかく時間を取ってくれてるのに、ごめんね。今度はちゃんと聞いてるから、もう一回説明してもらえる?」
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    DOODLEぽいぴく試し書き。
    💮💍(💮🌸)夢。
    💮の力の代償を捏造しています。
    続きは夜プラ予定。
    #aknkプラス
    ハナマルの力の代償に応えたい「ハナマル…大丈夫かな」
    宿屋の窓越しにすっかり暗くなった外を眺めていた私は思わず彼を思い浮かべそう呟いていた。


    ***

    時刻は3時間程前に遡る。

    ある依頼の為に私はハナマルと二人で街に出ていた。依頼の内容を卒なくこなしたハナマルのリクエストにより街で一杯飲んでから屋敷に戻ろうかと話していた時だった。運悪く天使の襲撃に遭ってしまったのだ。相手は知能天使ではなかったものの、数が6体と多かった。いち早く力の解放を行い、ハナマルは見事天使を倒したのだったが…。

    「…悪い、主様。ちょっと疲れちまった。馬車まで歩けそうになくて…何処か泊まれる宿屋ってありそうかい?」
    天使を倒しホッとしたのも束の間、そう言ってハナマルはよろよろした足取りで路地裏に入ると、壁にもたれ掛かりズルズルと座り込んでしまった。大丈夫?と声をかける私の声が聞こえるのか聞こえていないのか、ハナマルは浅い呼吸をするばかりだ。これはマズイと、私は近くにいた通行人に声を掛け急いで宿屋を探す。幸いにも空きのある宿屋を見つけたため、途中で薬等を買込み宿屋へ向かった。
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