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    住めば都

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    住めば都

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    #aknk版深夜の創作一本勝負 よりお題をお借りしました
    使用お題「スイーツ」。メインはロノと主様、友情出演でハナマル、ユーハンという感じ。夢要素は香る程度。
    今年のパレスはさつまいもがやたらと豊作。処理に困っているロノに、主様がアドバイスをしたようです。
    パレスの日常の一部を切り取るようなつもりで書きました。

    #aknkプラス
    aknkPlus
    #あくねこ夢
    cats-eyeDream
    #aknk夢

    秋の味覚の楽しみ方 本日のおやつであるスイートポテトを前に、デビルズパレスの女主人は目を瞬かせた。
     昨日はさつまいものマフィンで、一昨日は食後のデザートがさつまいものモンブランだった。その前の日は、確か夕食にさつまいものサラダが出たし、さらにその前はポタージュだったか。さすがに三日以上前ともなると記憶が怪しい。
     彼女はさつまいもが大好きなので、連日でも全く構わない。だがいくら旬の食材とはいえ、こうも同じ食材を使ったメニューが続くと、台所事情が気になってしまう。
    「最近、さつまいもの料理やスイーツが続くね。旬だから?」
    「……やっぱ、気づきますよね?」
    「まあ、これだけ続けばさすがにね」
    「だよなあ……」
     訊ねた女に、厨房の主であるロノは渋い顔になった。どうやらさつまいもメニューが続いていることを気にしていたらしい。
     ロノがなにも悪くないのにすいませんと謝るので、彼女は慌ててどれも美味しく頂いていることを伝えた。それから、さつまいもばかりが食卓にのぼる理由を問う。
    「敷地内の畑で、毎年さつまいもも育ててるんですけど、どういうわけか今年はすげえ豊作で……」
     想定外にたくさん収穫できたのはいいが、消費するのに苦労しているのだという。長期保存ができる食材ではあるが、それにしても量が多いらしい。
     いったいどれだけの量が取れたのだろう。女はちょっと興味がわいたが、それより今は困った様子のロノを助けるほうが優先だ。
     これまでロノが作ったさつまいも料理の数々は、どれも中央の大地――彼女の世界でいう洋食ばかり。さつまいもを使った料理やお菓子は、和食にもたくさんある。メニューを考える手伝いができるはずだ。
    「よし! ハナマルも呼んで、作戦会議しよう!」
    「了解です! オレ、声かけてきます。主様は、ここでゆっくりスイートポテト食べててください!」
    「うん、ありがとう。いただくね」
    「あとで感想聞かせてくださいね!」
    「わかった」
     軽い足取りで食堂を後にするロノを見送って、女はスプーンを持った。つやつやのスイートポテトを掬って、口へ運ぶ。
    「ん〜〜、おいしい〜〜」
     口の中で、クリーミーな甘さが解ける。今まで食べた中で一番おいしいスイートポテトに、女は顔を蕩けさせた。ロノの作る料理は、今日も絶品だ。

    「主様、ハナマル様をお呼びだとか〜?」
     女がスイートポテトを食べ終えるころ、ロノはハナマルを伴って戻ってきた。いつもの調子でへらへらしているハナマルに、女はすっと表情を引き締める。
    「うん。どうしても、ハナマルに手伝ってもらいたいことがあって……」
    「え、なに。なんか深刻な感じ……?」
     つられて真剣な表情になったハナマルに、彼女は一転、にっこりと笑いかけた。
     呆気にとられた顔に変わった彼を満足そうに見やる。マイペースなハナマルにからかわれることが多いので、ちょっとした意趣返しだった。
    「ううん、全然。あのさ、ハナマルって大学いも作れる?」
    「は? え? 大学いも? いや、まあ作れるけど……」
    「さつまいもの炊き込みご飯とか、芋もちに芋けんぴ、さつまいもチップスもいいよね! あ、干し芋にしたら、小腹が空いたときにつまめていいかも! ね、ハナマル!」
    「あー……なるほどな、だいたい察したわ」
     女が怒涛の勢いでさつまいもの料理や菓子を挙げるのを聞いて、ハナマルは自分が呼ばれた理由を察したらしい。
    「俺もそろそろ、バターやクリームを使わないさつまいも料理が食べたいと思ってたところだからな。喜んで協力させてもらうぜ」
     ニッといつもの笑みを浮かべたハナマルは、頼もしいことこの上ない。さすが、好きが高じて和菓子を手作りするだけある。
    「やったね、ロノ!」
    「はい! ありがとうございます、主様! ハナマルさんも、よろしくお願いします!」
     ハナマルに対し深々と頭を下げるロノを見て、女は微笑ましいものを見るように目尻を下げた。
     あれだけ美味しい料理を作れるのに、ロノにはちっとも驕ったところがない。むしろ、もっと美味しい料理を作りたい、自分の知らないレシピを知りたいと、向上心に溢れている。
     そういうロノから、彼女はいつも「もう少し頑張ってみようかな」と勇気をもらっていた。
    「じゃあまずは、主様ご所望の大学いもから作るかね」
    「やったー! ありがとうハナマル!」
    「じゃあオレ、さつまいもを持ってきますね!」
    「あ、ロノ! 私も手伝うよ!」
     さっと駆け出したロノを、女が追いかける。主人が働いているのに執事である自分が待っているだけというわけにもいかないと、ハナマルも彼らの後に続いた。


    「おや、これは……大学いもですか。懐かしいですね」
     その日の食後のデザートを見て、ユーハンは嬉しそうに眦を緩めた。東の大地出身の彼にとっては、馴染みのある料理だ。
    「ハナマルさんに教えてもらって作ったんだ。他にもいくつかレシピを教わったから、楽しみにしててくれよな!」
    「ええ。ありがとうございます、ロノさん。懐かしい味がまた食べられて嬉しいです。お礼と言ってはなんですが、緑茶をお入れしますね。大学いもには、緑茶がよく合いますから」
     淑やかに笑んだユーハンは、手早く緑茶を入れる準備を整える。ロノは初めて作った大学いもを口に入れ、年上の友人が入れてくれた緑茶をすすった。
    「ほんとだ! 緑茶、めっちゃ合うな!」
    「ですよね」
     デザートを楽しみながら、ロノの脳裏にアイディアが閃く。
     今度、緑茶に合わせたアフタヌーンティーを用意してみるのはどうだろう。食の好みがユーハンやハナマルに近い主人は、喜んでくれるのではないだろうか。
    「なあ、ユーハン。今度さ……」
     ロノはさっそく、アイディアをユーハンに伝えた。緑茶に合う菓子を用意するなら、緑茶をよく飲んでいる彼の協力は必須だ。
     あとでハナマルにも声をかけることにしよう。主人を喜ばせるための仕事であれば、彼もきっと積極的に手を貸してくれるだろう。
     楽しいな、とロノは思う。料理は好きだし、レシピの研究はいつだって楽しい。だが、大事なひとが喜んでくれる顔を思い浮かべながらする料理は、楽しさが段違いだ。
     主様が――あの方が、自分たちの味方でいてくれる。ロノはそれだけで、どんな難題だってこなせるような気持ちになるのだった。
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    住めば都

    DONEあくねこ、ルカス夢。
    いつもドキドキさせられて悔しい主様が、意趣返しのつもりで「ルカスは冗談ばっかり」と返したら、実は全部本気の本心だったと暴露される話。

    交渉係を務めて長い男が、自分の思いに振り回されて本音を隠せず、苦し紛れに冗談だよって見え見えの誤魔化し方しかできないのめちゃくちゃ萌えるなと思うなどしました
    いっそ全部、冗談にしてしまえたら 目の覚めるような美人ではない。愛嬌があるわけでも、聴衆を沸かせる話術を持つわけでもない。
     至って普通。どこにでもいそうな、地味で目立たないタイプ。――それが私だ。
     おおよそ三十年かけて築き上げた自己認識は、異世界で出会ったイケメン執事たちに「主様」と呼ばれ大切にされたところで、簡単に揺らぐようなものではない。
    「フフ、主様といられる時間は、本当に幸せです♪ この時間が、永遠に続けばいいのになあ……」
    「はいはい。全く……ルカスったら、冗談ばっかり言うんだから」
     上機嫌に微笑む担当執事を、私は半眼で睨みつけた。
     ルカスとアモンは、口説くようなセリフをよく言ってくる。恋愛経験の少ない私はそのたび顔を赤くしてドギマギしてしまうのだが、彼らの思惑どおりに翻弄されるのを、最近は悔しいと感じるようになっていた。
    1884

    住めば都

    DOODLEあくねこ。ナックとハンバーグの話。友情出演、ロノとテディ。
    執事たちの話題に上がるだけですが、美味しいもの大好き自称食いしん坊の女性主様がいます。
    後日、お礼を伝えられた主様は「私が食べたかっただけだから」と苦笑したそうです。

    お肉が苦手なナックに豆腐ハンバーグとか大根ステーキとか食べさせてあげたい気持ちで書きました。
    美味しいは正義 今日に夕食のメニューは、ハンバーグだ。
     食堂に向かう道すがらで会ったテディが、鼻歌混じりで嬉しそうに言うのを聞いて、ナックは落胆の気持ちを曖昧な笑顔で濁した。
     ナックは肉全般が苦手だ。メインが肉料理の日は食べられるものが少なく、空腹のまま夜を過ごすことも多い。
     だが、ハンバーグを心から楽しみにしているらしい同僚に、それを伝えることは憚られた。食事は日々の楽しみだ。テディには心置きなく、好物を味わってほしい。
     食事の時間は一応決まっているが、執事たちは全員揃って食事を取るわけではない。一階や地下の執事たちはそろって食べることが多いようだが。
     決められた時間内に厨房へ顔を出し、調理担当に、食事に来たことを告げる。そうして、温かい料理を配膳してもらうのだ。
    2130

    住めば都

    MEMO2023クリスマスの思い出を見た感想。
    とりあえずロノ、フェネス、アモン、ミヤジ、ユーハン、ハナマルの話をしている
    執事たちが抱く主様への思いについて現時点で、あるじさまへの感情が一番純粋なのはロノかなという気がした。
    クリスマスツリーの天辺の星に主様をたとえて、でもそこにいるのは自分だけじゃなくて、屋敷のみんなも一緒でさ。
    主様と執事のみんながいるデビルズパレスを愛してるんだなあということがとてもよく伝わってきて、メインストのあれこれを考えると心が痛い。ロノの感情と愛情が純粋でつらい(つらい)

    なぜロノの贈り物にこんなに純粋さを感じているかというと。
    手元に残るものを贈っている面々は、そもそも根底に「自分の贈ったものを大切に持っていてほしい」という思いがあるはずで、贈った時点である意味主様からの見返りを求めているのと同じだと思うんですよね。
    ただ、消え物にするか否かは思いの重さだけでなくて、執事たちの自分への自信のなさとか、相手に求めることへの拒否感とか、なにに重きを置くかの価値観とか、いろいろあると思うので、消え物を選んだ執事がみんなロノほど純粋な気持ちではいないんだろうなと思っている。
    1511

    related works

    住めば都

    DONEあくねこ、ハナマル夢(?)
    ※本編2.5章、水龍の唄、ワインフェスティバルの内容に触れています。
    時系列的にはワインフェスティバル8話のあと。イベストを読み返していて感じたことをこねこねしました。捏造過多です。
    独白なので夢と言っていいものかわかりませんが、考えているのは主様のことなので一応夢ということにしておきたい。
    ないものねだり 宛てがわれた宿の一室でベッドに身を横たえたハナマルは、酒精が入ったわりに冴えてしまった目で、ぼうっと天井を眺めた。ついと利き手を天に伸ばす。緩く拳を握ると、掴んでおきたかった大事なものの記憶が脳裏を駆け抜けた。
     感傷的な気分になっているのは、ルカスを相手に過去の話をしたからだろう。まさか中央の大地に、燃え尽きた郷里のことを知っている人間がいるとは思わなかった。
    「百年経てば、か……」
     刺青を消したいと相談したハナマルに、刻まれた印は消えずとも人々の記憶のほうが風化すると、ルカスは言った。確かにそうだとハナマルも思った。
     だが、背に負った龍の意味を知るものがいなくなるのにそれだけ年月がかかるのだとすれば、彼が唯一と定めた主人がハナマルの出自を知る日が、いずれやってくるかもしれない。
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