「満塁は俺のことを美化している」満塁の8年間に渡る片思いの期間中、満塁と弦次郎がそれほど一緒にいる時間は多くなかった。そのため、満塁は弦次郎との思い出を少しずつ美化していたのかもしれない。
弦次郎は大学時代からずっと優しくて格好いい憧れの先輩。それはプロ入りをした後でも変わらない。
弦次郎は満塁から寄せられる期待が重く、疎ましいと思うことが偶にあった。自分はそんなに立派な人間ではないし、いつも優しい顔をしてやれるほど余裕もない。厳しい対応をしても、偶に素っ気なくしても、満塁は自分を慕って何処へでもついてくる。
満塁はドラフト下位で指名されながら、順風満帆に毎年成績を伸ばし続け、子供から大人まで人気を得て、まるで球団の顔のようになっていた。年俸も当然、順調にいけば早々に億を超えるだろう。
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