お題『ビーチ』 組織の残党が潜伏しているとされている場所は、都の中心地から離れた海岸沿いにあった。
降谷がひとりで偵察をしに行った日。深夜から朝にかけて様子を窺っていたが、残党たちの動きは特になく、降谷は朝陽が昇ってしばらく経ってから帰路についた。
その帰り道。陽の光を浴びてきらきらと輝く海を横目に見ながら愛車を運転しているうちに、ふと気分転換をしたくなって、降谷は車を停めた。
ひとけのない砂浜へと降りて、降谷は大きく背伸びをする。何時間も車の中で息をひそめていたので、身体がすっかり凝り固まってしまっていた。それをほぐすように伸びを繰り返して、軽く身体を動かす。大きく息を吸い込むと、潮の香りが身体の中にぶわりと入ってきて、海が目の前にあることを実感する。
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