日記【7月20日】
中等部3年アメトリンの寮室の清掃が完了した。 大量のターコイズ(ユナ)の血液が壁、床に付着していた。まさに地獄絵図だった。
昔から親交のあるフローライト、スピネルに事件について情報を聞き出したがフローライトは怒りと喪失感が混ざった表情をして何も答えなかった。スピネルは小さく「答えたくないです」と呟いた。
問題のアメトリンは何を聞いても「僕の切り替える蛾はどこですか、友達なんですけど」
「怖いな、僕は何をしていたんだっけ?恐怖かな」などの意味不明で支離滅裂の発言をしていた。明日精神鑑定を大病院で行う。
【7月21日】
とても暑い夏日だったがアメトリンを大病院に連れて行った。安全を確保するため車で移動した。助手席に乗ったアメトリンは誰かと対話をしていた。血が出るくらいずっと腕を掻きむしっていたため注意をした。
精神鑑定を行った際にアメトリンの精神は限界を迎えた。唸り声を上げながら診療室を飛び出し、屋上へ走って向かい、飛び降りる一歩手前でようやく医師と私が捕まえた。冷静になったアメトリンになぜそんな行為をしたのか聞くと、「分からない」の一点張りだった。
仕方がないので精神鑑定は1週間後再開する。
【8月3日】
政府の協議会により、アメトリンに謹慎処分が言い渡された。あまりにも軽すぎる処分に周りからは怒号が飛び交ったが、『類稀に見る圧倒的錬金術魔法の持ち主、この才能を逃したら魔法界の大損失だ』という意見が多数派だった故に、もどかしい判決となった。
教師であり、まとめ上げる存在の私からしたらとても辛い判決だった。謹慎処分のことを伝えるために私は久しぶりにアメトリンの寮室に入った。
心優しい無限の才能の塊だったアメトリンは別人かと思うほど顔色が変わり腕に無数の自傷痕がついたアメトリンは、処分を聞いた時に小さく俯いた。そして「…死刑が良かったのに…こんな才能がなかったら死んで償えたのに」と震えていたのがひどく脳裏に焼き付いている。