魔法学校長報告集会「魔法学校長報告集会を始めさせていただきます、本日はどうぞよろしくお願いします。」まっすぐ息を吐きながら落ち着いた声で開始を告げる。
「今回会長と進行はクリスタルアカデミー学園長、フローライト改めウィル・ゼーバルトが務めさせていただきます。よろしくお願いします。」久しぶりに自分の本当の名を呼んで不思議な気持ちになる。
魔法学校長報告集会。年に2回魔法界にある全ての魔法学校の学校長・学園長が集まり、近況報告や昨今の魔法学校の問題点の意見交換などを行う集会だ。私は5回参加して初の会長と進行を務めることになった。
隣にちょこんと座っているアフタークラン魔法専門学校の学校長であるアンネ・ファルシュはこちらをチラリと見ては不敵な笑みを浮かべ、小声で耳元で話しかけた。
「10年前の事件のことについて説明しなよ」
手に力がこもったが冷静に息を少し吐いて、「…言われなくても」とこちらもアンネ校長の翡翠の耳飾りが優しく揺れる耳に囁いた。「…へえ」
「まず最初に各学校、学園の近況報告から始めます。…アフタークラン魔法専門学校長、アンネ・ファルシュ様」
アンネ校長はスッと立ち上がりやたら長い紙をペラペラと音を立てて捲った。覚えるのが苦手なんだろうか。
「えー…アフタークラン魔法専門学校は去年と変わらず大きなトラブルはゼロ、魔法を使った犯罪もほぼ起きていません。」
「＿＿ほぼって事は起きたんでしょ？」
「はあ！？黙りなさいよ、今読んでるんだから！」
トラブルが起きてしまった。今年こそ穏便に行きたかったのに。私は右端の席に座った背の高い男性、ウェルズ校長を見てジェスチャーで静粛にと伝える。わかりやすく白けた顔をしたウェルズ校長は頬杖をついた。
「コホン、すみません。そして我が校の最大の強みである魔法検定の合格者は過去最高の18人を記録いたしました。」アンネ校長は周りを見渡す。次々に感嘆の拍手が沸き起こりアンネ校長は誇らしげに微笑んだ。
「以上、アフタークラン魔法専門学校の近況報告でした。」
「ありがとうございました。次にエルムローゼ魔法高等学校＿＿」私が目線を上に上げるとエルムローゼ魔法高等学校の校長、テトラ校長が私を不服そうな目で見つめていた。自分よりも若い校長だが雰囲気がいつ見ても怖い。
「…どう、されました？」
「…魔法犯罪者を産んだ学園の学園長が進行する魔法学校長報告集会などあまりいい気分ではありませんね。」そうきっぱりとテトラ校長が言葉を吐き捨てると次々に「そうだ、そうだ」「テトラ校長に代われ」など罵詈雑言が飛び交った。さて、困ったものだ。
隣に座るアンネ校長を見るとアンネ校長はニヤニヤ笑った。


あきた😩