悪い子風に揺れるカーテンが眩しい光できらきらと宝石のように光る。
それは決して太陽の光ではない。
この世界に浮かぶ、大きくて綺麗で残酷な月。毎年近づいて世界と大切な人たちを壊してしまう。
そんな世界でこんなことを思うのは不謹慎かもしれないが、〈大いなる厄災〉と呼ばれるそれがこんな近くにあるなんてお伽噺のようで少しわくわくしてしまう。
手を伸ばしたら届きそうなぐらい大きな月。
子供の頃、絵本で見た憧れの光景に手を伸ばすと、ぐいっと窓の外へと引き込まれる。
「ぎゃっ!」
「こんばんは」
くすくすと笑いながら、落ちそうな私の体をひょいと掬い上げたのは箒に乗ったオーエンだった。
「し、死ぬかと思いました」
「2階から落ちたぐらいで死なないだろ。人間はわからないけど……試してみる?」
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