君に続くひと匙 尚文は、同じお茶をちまちまと毎日少しずつ消費している。
必ず一日一杯、茶葉はスプーンひとすくい。おかわりを頼む時は決まって別の茶葉を頼んでくる。同じのにしようか、と訊いても「分からなくなっちゃうから」と断られる。何が分からないんだろう。茶葉の定期購入でもしてるんだろうか。城の連中はなんとなく察してるくさいのに、どうやっても俺には教えてもらえない。
俺も飲みたい、というと、同じものを用意してるからそっちを封開けて使って、と言われる。尚文の日課のお茶は、尚文専用だ。
「淹れてきたぞー」
「ありがと。あとどれくらい残ってた?」
「一日一杯ペースなら一週間分くらいじゃね?」
「そっか」
仕事机に向かっていた尚文が、カップを受け取って礼を言う。前は侍女にやってもらっていたけど、日課のこれだけは最近、俺が率先して尚文に淹れてやるようにしている。このお茶を飲む時、口をつける瞬間の尚文の顔が、ぶっちゃけ好みだからだ。
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