【サンプル】君に太陽は眩しすぎる 月明りさえ届かない丑三つ時、仄暗い感情を抱きながら鬼太郎は布団の中で小さく丸まった。墓場で生まれ育った鬼太郎には馴染み深い夜が、まるで己を責め立てるかのようざわざわと騒いでいる。瞼を閉じれば闇が広がり、もうひとつの瞼を閉じれば静寂が広がる。真夜中の喧騒を遮るように瞳を閉じても、どうしてだか心の平穏は訪れてくれない。いつまで経っても騒ぎ続ける心臓の在処に辺りをつけて、鬼太郎はそこをぎゅうっと握った。鎮まらない血液がどくどくと身体を巡り、しまいには下腹部へと集中していく。
いけない兆候だ。分かってはいるけれど、生理的な反応を止めることなど思春期の鬼太郎には難しい。止めようとしても思い浮かぶのは愛しいあの人のことばかり。養父のことを考えると、暗闇だったはずの目の奥がチカチカと煌めいた。眩しくてたまらない。夜半の布団の中だというのに、鬼太郎はその眩さに思わず瞳を歪めた。
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