お疲れ世界には平和が戻った。アテナ――沙織の祈りにより、聖闘士達は蘇り黄金聖闘士達はまた地上の平和の為にとそれぞれの宮を守護し、白銀聖闘士もまた任務を遂行していた。
サガは教皇となりその間で執務をしていたが、恋人である星矢が突然やって来て椅子から腰を上げる。会う約束はしていなかった。
その少年には甘いサガで、会いに来てくれるのなら己から会いに行くのにと微かに眉を下げ、心の内でも大切な恋人を甘やかしていた。
しかし、星矢はサガに『お願い』があって来たらしい。
「もっとだって。」
「こうか?」
「いやいや、まだ全然だろ!」
星矢とサガは向かい合い、先程からこうしたやり取りをしている。
「これでどうだ。」
自分の太腿へ手を乗せて屈み、眉目秀麗な面を星矢の顔へ近付けてみせた。
すると星矢は、じわりじわりと照れ臭そうな笑みを浮かべ始める。サガは訳が分からず首を傾げる。
「おう。じゃあ――お疲れ。サガ。」
丁度見つめ合える位の同じ目線の高さになると星矢は一言、その後に形の良いサガの唇にキスを送る。
「!!」
「まーたな!サガ!」
サガは暫し固まっていた。まさかのあの星矢からのキスである。何も考える事が出来ず、自分の口元を手で覆い佇む事数分。少年が手を振り去っていくのをただ見送るだけしか出来なかったが、双眸を細める。唇は微かな笑みに弧を描いていた。
星矢とサガには身長差がある。キスを送りたいと、その為に屈んで欲しいという可愛い恋人の甘えに、口元が緩むのが抑えられない。
「――愛しい奴よ。お前はどこまで私を堕とせば気が済む?」
一人となったサガはそう呟いたのだった。