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    kanimiisooo

    @kanimiisooo

    戻ってきた!
    黄泉の国から誤字脱字たちが帰ってきた!

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    kanimiisooo

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    ストリツ短編。♈️🦉前提。セフレ気味。
    シーズンはじめ頃、こんなことがあってもいいんじゃないかと思った願望ss

    くだらない夜のひと時「ファーーーーック! また負けた! チッ、もう一回やるぞストラス」

    ブリッツは大きな舌打ちをして、トランプを勢いよくベットに叩きつけた。
    約束の満月の夜。
    情事を終えたふたりは珍しく夜の時間を満喫していた。もうかれこれ一時間、ベットの上でポーカーを楽しんでいる。正確には楽しんでいるのはストラスだけだが。始めたきっかけは──ブリッツのひと言。
    キュルキュルキュルと映画のワンシーンのように過去に戻る。

    ゴムを丸めてゴミ箱にシュートしたブリッツは、タバコに火をつけ大きく肺に入れてから、ふーっと煙を吐いた。しばらく考え込んだ顔をしたが、吹っ切れたのか早口で話し始める。
    「来月の満月は予定があるから、こねぇぞ」
    あまりにもぞんざいで己の意思をガンとして譲らない──そんな意思が声に滲む。ストラスは上半身を起こして肩をすくめた。こういう時のブリッツは何を言っても聞かないことを彼は知っている。だから彼が気持ちよく事情を話すよう誘導するのもある種努めだと思う節があった。
    「……そう」
    ストラスのグレーの羽によく映える四つの赤い瞳が寂しそうに伏せられた。少しばかりしおらしく、そして相手の罪悪感を煽りつつ、けして嫌味な言い方にならないよう細心の注意を払う。
    「……でもそれは少し寂しいよブリッツィ。……例えば、そうだね。別の日に会えたりしないかな? ほらこの前の月見祭のように」
    「NOだ」
    ブリッツは顔を背けて手でバッテンマークを作った。即答なんて全くもって可愛げがない。しかしストラスの脳内はそれすら愛おしいと思った。遊びとはいえ、ブリッツは魅力のある悪魔だった。すっかりのめり込んでる──それは楽しくも恐ろしい……ストラスは胸の中で苦笑した。
    「わかったよ、ブリッツィ」
    「……やけに素直だな」
    「泣いて縋った方が効果的だった?」
    ブリッツは不機嫌そうに眉を寄せ、盛大な舌打ちをする。ストラスは触れるか触れないかの距離までブリッツの側にそっと身を寄せた。
    「そんなに怒らないでブリッツィ‪〜。かっこいい顔が余計にかっこよくなってしまうじゃないか」
    ブリッツは目を丸くしてから眉を寄せる。ジト目になったブリッツの顔はまるで凶悪犯だ。とても悪魔らしいといえる。
    (だかしかし、どうしたものか……)
    ストラスはそう考えながらブリッツのむくれた頬にそっと手を添えた。
    「寂しいのは本当だよダーリン。私は満月じゃなくても君と一緒にいたいもの」
    ブリッツの顔を見て静かに語りかけ、指の腹で一度撫でる。優しく、紳士的に、そして情事を匂わせる甘いタッチで。
    「ブリッツィ……」
    ストラスはゆっくりとブリッツの唇を撫でた。
    「っ!」
    細く長いストラスの指がガブリと噛まれる。ビビビと全身を巡る毒のような刺激。
    (あぁ……ブリッツィ……)
    うっそりと笑みを深めるストラスに嫌な予感がしたのか、ブリッツはプッと音を立てて口を離した。
    「ん。残念♥️」
    「残念じゃねぇよ、変態クソバード。お前は俺に何されても発情すんのか? あ? 勘弁してくれ、マジで」
    「ブリッツィだからだよ……わかってるくせに」
    ストラスは噛まれた指に舌を這わせた。下品にぴちゃりと音を立てる。ストラスは一度伏せた視線を再びブリッツに合わせた。ブリッツの喉だけがピクリと動く。それに満足すると顔面にクッションが飛んでくる。
    「笑ってんじゃねぇよ!」
    「わっ、待って、待ってってばブリッツィ!」
    ぽんぽんと降ってくるクッションの嵐に、ストラスは慌てながらも、この子供のようなやりとりが楽しくてしょうがないのか声が弾んでいる。最後のクッションを華麗に受け止めてストラスはブリッツに提案した。
    「じゃあ、一つゲームをしない?」
    「ゲームだぁ?」
    首を縦に振ったストラスはパチンと指を鳴らす。ふっと小さな爆発音と共に可愛い絵柄が描かれたトランプが落ちてきた。
    「んだよ、これ。──あぁトランプか」
    「昔、ヴィアとよくやったんだ」
    「……いやだからなんでお前とゲームしなきゃなんねぇんだよ!」
    ストラスはブリッツの話にうんうんと頷きながら、箱からトランプを取り出した。思いの外年季の入ったトランプの片隅には、ヴィアが描いたのかストラスの顔が落書きされている。ブリッツは急に気まずくなって、顔を逸らした。
    「ブリッツィ?」
    「……チッ、だから! なんで! お前と! ゲームなんて! しなきゃなんねぇんだよ」
    「君は次の満月の日にここへ来たくない、そして私はその理由が知りたい。……ゲームの賭けにはなるはずだよ? それとも君は私に負けるのが怖いのかな?」
    トランプをシャッフルするストラスに、ブリッツは睨みをきかせた。不機嫌そうに曲がった口はストラスが思い描く言葉を紡いでいく。
    「んだと? 誰が負けるのが怖いって?」
    頬が引き攣るブリッツを見ないふりして、ストラスはカードをゆっくりと切っていく。ブリッツの苛立ちはどんどんヒートアップしていくのか、喚きながら中指を立てストラスを挑発する──が、ストラスの感情には怒りなんて存在しないのか表情は穏やかなままだ。そして最後までストラスがブリッツの挑発にのることはなかった。
    「寝言は寝て言え。お前が勝負に負けても2回目はねぇぞ!」
    「OK。一回勝負でいいよ。何にしようか?」
    ブリッツは顎に手をかけて、う〜んと唸る。何か閃いたのか、ストラスの前に手を差し出して狡い笑みを浮かべた。カードを整えたストラスはその笑みを堪能しながら、ブリッツにカードを素直に渡す。
    「勝負は──ポーカーだ、いいな。ストラス」
    「喜んで」
    恭しくお辞儀をしたストラスに、フンと鼻を鳴らしてブリッツはカードを配り始めた。


    そして冒頭に戻る──。
    ブリッツは、クソがつくほど弱かった。運がないといった方が正しいのかもしれない。
    何回やっても強い手札は彼の元にやってこない。あきらかにイカサマをしているというのに。それはブリッツの凡ミスも要因だったが、運がないのが原因だった。才能だといってもいい。いくら技術があって巧みに表情を操れても運がなければ意味がない。
    30回目の勝負も見事に負けたブリッツが、うぎゃぁ〜〜〜と叫んで、カードを天にぶち撒ける。荒れ狂う悪魔をストラスは困り顔で見つめた。
    (手加減してるのに、この運の無さ……。カジノに行ったら身包み剥がされるどころか、売り物にされてしまうね。まぁ、それは……それで……、いやダメだ。非常によくない! 他の悪魔に目をつけられるなんて、その場にいる全員をぶっころ……うぅん、瞬殺してしまいそう。はぁ……ブリッツィにはカジノに行きたくないならないように、おまじないをかけておかないと)
    「もう一回だ! ストラス!」
    「……いいけどもう私は君に30回も勝っているのに。……理由くらい教えてくれてもいいんじゃないかな? ブリッツィ」
    「……」
    親に叱られた子供のように、ぷぅと頬を膨らませて目を潤ませるブリッツの可愛さにストラスは不整脈を起こした。
    「ぐぅ!」
    ぎゅうううと締めつけられる胸の痛みは尋常じゃない。どっどっどと脈が異常な速さで音を立てる。今まで生きてきた中で、一番甘く息苦しいほどの痛みに悶えながらも、必死に口を動かす。
    「や、約束は守らなくてもいい……から。ぐっ、はぁ、はぁ……、そ、そんなことで私は怒ったりしないし、魔導書を取り上げることもない。だから、ね? 教えてくれないかい、ブリッツィ」
    「…………だけどよ」
    潤んだ瞳からポロリと涙が溢れて、再びストラスは胸を抑えた。
    「ぐっ、あぁ!」
    破壊力がすごいなんてもんじゃない。ストラスの心臓も脳みそもキャパオーバーに達しかけた時、口を尖らせたままのブリッツが呟いた。いつも怒鳴り散らす大声は鳴りを潜め、蚊の鳴くような小さな声で呟く姿はいつも自分が見ていたブリッツとは対極にいた。あまりの可愛さにストラスの心臓は悲鳴をあげ続ける。
    「……バカにしたら承知しねぇかんな」
    スンと鼻をすすって不機嫌そうなブリッツだったが、理由を話すのが恥ずかしいのか、頬をほんの少し赤く染めている。
    「ぎゃっ!」
    ストラスのライフがメータへと変化し、針は勢いよくゼロ──マイナスを指す──死は目前だった。それでもなんとか持ち堪え、胸を抑えたまま前のめりに屈んで、震える手をなんとか動かし、続けてくれとブリッツに懇願した。
    「……地球で、馬が……」
    さっきまでの泣き顔がなりを潜め、ブリッツの様子が変わった。目をキラキラさせて、両手で拳を作り興奮げに話し始めた。
    「地球の馬が一斉に集まる日があるんだ! 俺が愛するファッキンホースが大集合! あぁ……やべぇ考えただけで興奮する。俺はどうしても見てぇんだよ! ファッキンビューティな地球の馬を! 六つの国からそれぞれの代表馬が……あぁ、クソ……。トップなんだ。わかるか、地球のクソみたいな小さな国の中で、勝ち上がった勇者たちが集まる日なんだぜ、ストラス。……こんなミラクルどこ探したって落ちてねぇよ。まじで……そりゃあさ、地球の馬なんて、そりゃ地獄の馬たちとは比べ物にはなんねぇ、だけどな……バカにはできねぇほど、ヤベェんだ。顔はもちろん、立て髪の流れるようなライン……スラッと伸びた脚なんてサキュバスなんかより綺麗だぜ……。はぁ……想像しただけでチンコが勃っちまう。クールでイカしてて最高にヤリ……うわ、何すんだよ」
    ストラスに投げられたクッションを受け止め、ブリッツは口を尖らせた。
    「私と一緒にいるのに、他のお……馬の話をするなんて失礼だよ」
    「何キレてんだよ」
    「キレてはないさ。君のデリカシーのなさを少し残念だと思っただけ」
    「んだとぉ?」
    ストラスはこの話はおしまいと言わんばかりに手をポンと叩いた。
    「でも君が来れない理由がわかってよかったよ。君が言っているのはドバイワールドカップナイトのことだろう? 国際招待競走だったかな。次の満月にかぶる地球の競馬は今のところそれしかないはずだよ」
    「ストラス……お前知ってんのか!」
    急に距離を詰められブリッツに手を取られたストラスは思わぬ事態に、嬉しさより戸惑いが勝ってのけぞってしまった。
    「ぁ、う、うん……、ぁ、ごほん。知ってる。知ってるさブリッツィ〜」
    握られた手の感触をもっと堪能したいと笑顔で近づいたストラスに、何を察したブリッツがパッと手を離す。
    「もう、いじわる」
    ぷぅと頬を膨らませても、ブリッツはゲーッと音を出しそうな勢いで口を開く仕草をした。
    「フン。何もしてぇだろうが」
    「まぁ、そんなところも可愛いんだけど♥️」
    「うるせぇ! というわけだ。だから次の満月は……」
    ストラスはゆっくりと首を振って楽しそうに、ブリッツの鼻の先を指で突いた。
    「それを決めるのはこれを見てからでもいいんじゃない?」
    パチンと指を鳴らすと、寝室の天井からスクリーンが降りてくる。ブリッツが口を開くよりも、素早く呪文を唱えるとスクリーンに馬が走る姿が映る。ぱぁあぁと効果音が聞こえてきそうなほど、ブリッツは目を輝かせ笑顔のまま「マジで?」と呟く。
    「私の魔法を使えば、最強の環境で競馬を楽しめると思うけど? セックスをする必要もないし、君の好きなドリンクも料理だって準備しよう。必要なら勝馬投票券だって買えばいい。ドルでも円でもユーロでもなんでも用意してあげる」
    「のった! ナイスだ、ストラス。てめぇもたまにはやるじゃねぇか!」
    心底嬉しそうに歯を見せて笑うブリッツに満足して、ストラスは小さく頷いた。やっほーと子供のようにはしゃぐ悪魔を見つめながら、ふと悪さをしたくなる。例えばここでブリッツの運のなさを利用して、ちょっとたけご褒美をもらったっていいじゃないか──と。
    (でも欲をかいたら、逃げちゃうかな?)
    ストラスは気づかれないように小さく微笑んで、ブリッツが楽しく話せることを優先した。
    「ブリッツィ、出馬する馬の中で一番気になってる子はいるの?」
    「お、お前それ聞いちゃう? いいぜ、俺様が特別に教えてやる。今日は寝かせねぇからな!」
    「……ふふ、そのセリフ別の機会で聞きたかったな」
    「なんか言ったか?」
    「何も。お手柔らかに頼むよ、マイリトルインプ」

    楽しげに話始めるブリッツに満足して、ストラスは頬に肘をついてブリッツの話に耳を傾けた。まさか本当に夜が終わって昼を通り越して夜になっても話が終わらない未来を知らないまま。
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