ストリツSS こわいろファッキン変態クソバードに、何回自分の名前を呼ばれたことだろう。電話越しで、直接会って、ベットの中で。幻覚の中にまでも出てくるんだから、オレの脳みそもいよいよいかれてしまった。
助け出された安堵感からきたのか、オレからキスをするなんて……自分が思っている以上に焼きが回ってきたのかもしれない。こういう時は、一歩も二歩も下がった方がいい──オレは、気だるい身体を起こして決意する。
自分のものより無駄に広いベッドには「心配した」と喚きながらオレを抱き潰したストラスが気持ちよさそうに寝息を立てていた。寝息に合わせてゆっくりと上下する柔らかそうな羽。ここに手をうずめると包まれるような温もりがあることをオレは知っている。その感触を求めるようにそろっと伸びそうになる手をオレは慌てて引っ込めた。勝手な動きをしないよう戒めるように自分の肩を抱く。
オレは息を殺してストラスを見つめた。
「寝てる分には可愛いのにな」
助けた見返りを求められ、セックスをしようといったのはオレ。
アイツはいつも通り、俺をベットに運んで名前を呼んだだけ。
紳士的に事を進めようとするストラスが、ブリッツィと俺の名前を読んだ時──その甘く濡れた声に怒りと恐怖が滲んでいた気がして、思わず好きにさせてしまった。
「しかしまぁ今日はだいぶキレてたな……だせぇヤツ」
思わずこぼれた呟き。心配させて悪かったなんて、オレは微塵も思っていない。少し肌寒くなった気がして肌を擦ると肩に触れた指が、小さな凹みを教えてくる。
「好き勝手やりやがって」
覇気のない自分の声に思わず顔を顰めた。全く調子が狂う。このままストラスが起きなければ、穏やかなままでいられるのに。
思いのほか時間が流れていたのか、ストラスの瞼がピクリと動く。
オレは慌てて、顔を伏せた。
「ん……ブリッツィ? 起きてるのかい?」
「……」
「ブリッツィ……風邪をひいてしまうよ。ね……コッチにおいで」
少し掠れた声。
まるでガキに言い聞かせるような台詞なのに、蜜のような甘い香りが漂ってくる。一度吸ったら二度と元の世界に戻れないドラックみたいだと頭の隅で思った。
オレが今以上に地獄の底へ落ちてしまうのはもう時間の問題なのかもしれない。
「ブリッツィ」
トドメを刺されるような甘い声が耳をくすぐる。
肌が泡立っていくのを止められないまま、オレは寝たフリを続けるしか出来なかった。