キスのやり方を教えるメフィ燐なぁキスってどうやるんだ?って執務室でメンズ雑誌を読みながら燐ちゃが突然訊いてくるから、メフィストがいきなりなんです?って言いながらも執務机を回り込んでソファに座る燐の隣に来ると、目に入った雑誌の紙面には「キスは自然に!ムードを大切に」と恋愛初心者向けの実になるのか分からない眉唾もののアドバイスが綴られている。自称恋愛アドバイザーという怪しさ満点の見た目の男性写真と共に紹介されている10の極意なるものに、まんまと恋愛ひよっこな末の弟が引っ掛かり、内容を真剣に読みながら、一応は人生の先輩たるメフィストに参考程度に訊いたらしいと察した。
キスを自然にって無理じゃねえ?するぞするぞって絶対に力んじまいそう。彼女もいない癖に順番をひと飛ばしにして何の心配だと呆れながら、今どの部分読んでいるんですか?と訊けば、ほらここんとこと雑誌をメフィストに見せるために身を寄せてくるので覗き込むついでに近づいた距離を詰めてちゅ、と軽く口付ける。瞬間、ぽかんと口を開けた間抜けな表情で燐がメフィストを見つめるから、こういうことですよと言えば、火を噴いたように顔を赤くして手が早ぇ!!と喚いてくるので、ああうるさいとメフィストは役にも立たない怪しげな雑誌をゴミ箱へと投げ捨てた。